02 遭遇
しばらく歩いても人の生活の形跡は無かった。鳥以外の小動物も見かけず。まぁ、小動物は臆病なので人前に姿を現すことはすくないんだけども。
けもの道というような跡も無い。藪になっていないだけマシかもしれない。笹とかは結構悪質だよね。手が切れたりするし。今は、そんなことは取り敢えず置いいて黙々と歩く。
前には進んでいる感じはするものの、本当に進んでいるという感覚がない。木立も区別はつかないし目標になるものも無い。ふと後ろを振り返るものの同じ風景にしか見えない。とりあえず最初に進むと決めた方向と思われる方向にゆっくり進んでいく。
下草の丈も伸びてきてハズレかなと思った所で前方に人影が。
2人の20代くらいの男の人。休んでいた最中なのか岩の上に座っている。
よく見ると、街道らしき道が見える。馬車のわだちが何本か...というレベル。
とりあえず、目が合うものの特に話しかけるわけでもなく、向こうからも話しかけてこないのでそちらへ歩いていく。街道に出るにしても目が合った以上迂回するのもはばかられる。見た目、不潔とか怪しいとかそういう感じはない。わりとカジュアルにも思える。
近くになってから一人がおもむろに立ち上がる。
「お嬢ちゃん、一人かい?」
バンダナを巻いた背の高い男が声を掛けてきた。
お嬢ちゃん?あ、あたしはこう見えても.....
あれ?あー、もういいや。
「はい。」
「どこまで行くんだ?方向が一緒ならついてってやるぜ。」
ナンパか?盗賊か?どうやらそういう類ではなさそうだ。ただ、どこへ行く。どこに行かねばならない。そもそも自分は何でこんなところにいる。
「あーー」
それは考えてなかったというか考えようがなかった。というか、そもそも地名なんて知らない。方角もわからない。頭の中に無いものは考えても出てくるはずも無い。
「あのですね.....」
「家出でもしたのかい?」
おぉ、良い言い訳が見つかった。ナイス提案。ということで、それに乗っておけば、そのほかいろいろ出てくるであろうこともその肩書きのおかげで不問にできる。
「あー、はい。そんな感じです。」
「今日はここでキャンプするんだが一緒にどうだ?」
んー、見た目だけは下心なさそうだし、信用してもいいのか。というかせめてここがどこなのかという根本的な事を知りたい。記憶も取り戻したい。食事とかもしたい。なんらかの話を聞くチャンスだ。
「お、お願いしてよろしいですか?」
「あぁ、いいぜ。ちょっと外れたところにテント張ってあるんだ。案内するよ。俺の名はレオと呼んでくれ。」
もう一人の男には、手を振って街道沿いを少し歩いたところから脇にそれる。
男は狼、男は狼。とりあえずすべて信用したわけではないが、取っ掛かりがほしかった。
そしてこのときには気がつかなかったものの、名前を聞かれもしなかった。方向性が多少違うが分けありの理由を察してくれたのかもしれない。
かさかさと下草をかきわけて進むと小さな広場に出た。確かに野営するには便利な場所なんだろう。
広葉樹が奥のほうで壁のようになっている。手前側の一角には岩がごろごろ。かまどを作るのに便利かもしれない。
そこでは焚き火で何か食べ物らしきものを作っている女の人がいた。
火にかかっているのは、鍋とウサギ肉かな?
女性が居るって事でちょっと安心。
「アヌップはまだ起きれそうも無いか?」
ここまでつれてきてくれたレオが女に尋ねる。
「明日には何とかうごけるんじゃないかな。」
そして私のほうをちらりと
「で、そちらのお客さんは?」
「ああ、ちょっとした家出娘を拾ってきた。」レオはさらりと流した。
「あっ、そう。」
女は男を蔑んだ目で見ながらあきらめ口調で返答する。
「私は、ジェナ。お嬢さん、お名前は。」
どきっ
ここらへんでおかしくなさそうな名前。今の会話と自分の知識では、とっさに答えられそうになかった。