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01 林の中、ひとり。

ふわり


ふかふかな場所から放り出された感覚。


どさっ


土ぼこりが巻き上がらない程度の土の地面の感覚。

胸から着地して、地面にぶつかりそうになり頭を引いたところで手足が軽く地面にぶつかる。

自分から飛んだわけではなく、誰かに飛ばされたような感じ。飛ばされたといっても突き飛ばされたというほどのものでもなく。ふんわりという感覚だけが残っている。

「いてててて。」

さほどの高さでもなく緩やかにとはいえ、転んだような感じなので痛いことは痛い。とばされるという心構えも無かったわけでなおさらだ。胸は柔らかいとはいえ、一瞬全体重が乗っかったわけで割りと痛い。

落下した体勢と、顔を後ろに引き上げたことで顔は地面につかなかった。とりあえず顔に擦り傷を作らずに済んで安心した。といったところで立ち上がって体の埃を払う。多少しめっけがあったのか砂埃で(けむ)いという感じではなかった。


ゆっくりとあたりを見回すと雑木林だった。下草はさほど無し。どこと無く人の手が入っているのか割と整っている。ただ、人影は無い。本当に人手が入った林かというとそうでもなさそうな所もあったりするので断定はできない。

空を見上げてみると明るい。ただ、太陽が昇っているであろうものの、雲に隠れているような感じだ。気温は高くも無く低くも無く。適温という感じだ。ただ、時間はわからない。少なくもと朝の冷え込みという感じではないので昼間。わかるのはそこまでで早い時間なのか、遅い時間なのか。そっちは不明だ。

もっともそれがわかったところでどうこうなるというわけでもないので興味は別の所へ飛ぶ。


耳を澄ますと。小鳥のさえずりが聞こえる。風にそよぐ草の音。いわゆる人の生活音らしきものは聞こえない。普通の林の中の音。風がすこしひんやりと気持ちいい。暑すぎず寒すぎず。


あたりを見回しているので首は動く。ぐるんとまわして違和感が無いか確認する。

腕は?こちらも大丈夫。大きく回して問題はなさそう。

脚。普通に動かせるし痛くない。すこし足踏みをしてみる。歩くのに問題はなさそう。最初にほっぽり出されたときにどこか痛めていないかは心配だったが杞憂のようだ。


足から再度見直し。ちょっと重めの革靴。紐でしっかり結ばれている。

皮チックなロングパンツ。ちょっとゆったり。きちんとなめされているのか足の動きに支障は無い。

体にフィットした皮のチョッキ。飾りポケットが2つついている。そんなに厚手ではないが、朝夕の冷え込み対策にはちょうどいいくらいだろうか。


長袖の厚ぼったい綿のシャツ。ふわふわしているので着心地は悪くない。

帽子はない。

荷物もない。


ポケットを漁って見る。ロングパンツとチョッキに2つづつ。

一通り調べると、銀貨が2枚。白金かもしれないし別のありふれたものかもしれないが見たことのないデザイン。人の顔。しばらく見つめて思い出せるか確かめてみるがまったく心当たりが無い。

左右のチョッキのポケットに1枚ずつ入れる。


一通り確認したところでふと考える。


自分の名前は?

年齢は?

生い立ちは?

さっき放り出される前のふわふわの前の記憶は?


集中してふわふわだった時のことを思い出そうとする。「あれ?」

何も思い出せない。それもついさっきの話である。


とりあえずそのまま考える。

ぽつねんと立ったままで居るのもアレなので、腰を下ろして胡坐をかいて座って考える。

座禅をして......いや、なにか違う。


思い出そうにも取っ掛かりすらない。

座っていてもどうしようもないので、とりあえず立つ。

左を見ても右を見てもただの雑木林とあきらめる。どちらに進めばいいのか?判断材料になるようなものはまったく無い。じゃぁ、動かない...たぶん、それは選択肢には無い。


少なくとも正面、しばらく先まで木にぶつからずに進めそうなのを確認して前進する。藪こぎも必要ない。藪を掻き分けてけていくのも結構大変な作業なんだよ。それをせずに進めるのならそれに越したことは無い。

サバイバル? そんな経験ありません。なぜかそれはわかる。


かといってその他は記憶もないんだよね。でも、知識はそこまであるやら不明だが残って居そう。

木の年輪は日照の関係で北のほうが狭いんだよね。地図があれば目印になるものを見つけて現在位置を確認することもできる。そもそも地図がないんだけど。


でも、北がどっちかわかっても、そもそも今ここが、どこなのかいつなのか、何なのかわかってないので意味がない。

町やら村やら街道やら。あるのかどうかもわからない。そもそも人が住んでいるのかすらわからない。そもそも人は居るの?


「あれ?あたしどこに住んでいたんだっけ?」


それすらもわからない。

ただわかるのはここにとどまっていてもどうにもならないこと。


そもそも食べ物すら持ってない。銀貨があるなら、だれかから買うことはできるのかもしれないが、今のところ人にすら会っていない

「幸いなことにおなかは減ってない。」

ただ、そのうちおなかも減ってくるだろうし、体力のあるうちになんとかしないと。


境遇はそれ以前の論外状態。


とりあえず進行方向を決めて歩き出す。できれば木立の無い平原を目指して。もしも森が深くなりそうなら違う方向に進めばいいんだし。

でも、水は無い、トイレも無い、お風呂も無い、寝床も無い。


とりあえず、何も考えずにまっすぐ進む。それが今の自分の命題だった。

とりあえず書き始めてみました。あらすじと最後だけを決めての見切り発車です。

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