その名は"アルフレッド"
訳もわからない内に俺は焼け野原に放り出された。いや、正しくは滅びた市街地なんだろうが、もはや正しい表現かどうかなど、何の意味も持たないのだと思った。
そんなことよりも、俺の目の前に居るシルクハットを被ったそいつが、俺目掛けて剣を降り下ろしていることをどうにかすることが最優先事項だった。
「はぁ。こんなパターン初めてだよアリス。転送して真っ先にコピー兵に出くわすなんて。さぁ、次は何を試そうか?」
「博士、アルフレッドはまだ生きていますよ」
「…へぇ、やるじゃんアルフレッド」
右に転がって剣を避け、そいつの腹部に蹴りを入れた。
運良く一発で破壊出来たらしく、そいつは動かなくなった。
取り敢えず、そいつの被っていたシルクハットを貰い、使えそうな物は全部頂いた。
「コピー兵ってあんな風に倒せたんだね」
「普通の人間ならば不可能です。あの剣をまず避けられません」
「ふーん。あ、そうだ。せっかくだからアリス、アルフレッドのナビゲーションしてあげなよ」
「届きません博士」
「おーい助手ー、椅子持ってきてくれないかい?」
「なんだよコイツら!」
結局のところ俺は自分の名前すら…いや、名前はわかるが名前しかわからないような状態だ。
このシルクハット軍団がどうして俺に切りかかってくるのかもわからないし、俺がどこに向かって進むべきなのかもわからない。
『アルフレッド、聞こえますか?』
聞き覚えのある声が聞こえた。
「そのまま直進です。右前方の建物の影にコピー兵が三体います。感づかれないように気を付けてください」
「へぇー、アリスはなんでも出来るんだねぇ」




