四年と十八日目
私の目の前には無数の培養器が並んでいた。
これらは全て『左手の爆心地』へと派遣されるらしい。
中に身体を丸めて浮かぶこの少年達は、一体何を考えているのだろうか。
「結果は?」
無表情でこちらに向かってきた助手の姿を見て、私は彼女に問い掛けた。
「1,928号も失敗です。ターゲットまで残り20,328mですから、以前よりは進歩したかと」
手に持った結果報告書に目を落としたまま、淡々と助手は答えた。
「毎平均のプラス分は?」
「およそ3メートルです」
毎回聞くたびに、彼女もまた平然と答えるのだが、こんなことを繰り返していたところで果たして私が死ぬまでに結果が挙げられるかどうか。
「基本的に二日に一人のペースだ。さて、ここまでに何年掛かった?」
「その質問に答える必要はないでしょう。それよりも、単純計算であと37年は掛かるかと」
そう。これまでに4年費やした。生産を可能にするまでおよそ6年掛かっているから、私達はかれこれ10年をこれらに費やし続けている訳だ。
「37年か。そしたら私は65歳のおばあちゃんになっているな。もっとも…」
「それまでに博士が死ぬか、世界が滅びれば別です」
助手は一切表情を変えずに言う。
「君は本当に冷たいな。それでも人間なのかい?」
私の問いに、彼女はやはり表情を変えずに答えるのだ。
「人間という区分には一応入りますが、見ての通り量産型ですので」
私の研究所は今日も変わらず、私と全く同じ顔をした助手達が大勢働いている。