第五話 仲良しクラスメイト
月花堂君のイベントを何とか乗り切った私だが、実はとても困った事がある。
前世を思い出して二日目、そして攻略対象二人目にして早くも詰んだ気がしなくもない。
理由は……
「おっはよー!百合愛ちゃん、たぐちゃん、今日も可愛いねー!」
「おはよう、火宮君」
「……おはよう」
「んー?たぐちゃん、元気ないねぇ。綺麗な顔が台無しだよー」
「あははは」
棒読みの笑い声って只の平仮名だよね。でもそれ以外に反応しようがないんだよ。
恐ろしく軽い調子で現れたのは、クラスメイトである火宮杜玄。
真っ赤な髪と真っ赤な目をした、イケメン。話し方とかポンポン出てくるお世辞だとか、ホストですか?って感じだけど顔はきちんと格好いい。雰囲気イケメンでなく、正真正銘のイケメン。
ここまで言えばお分かりだろうが、彼が『Week*Love』の二人目の攻略対象だ。
そして私が困っている元凶。
「……火宮、そのたぐちゃんって止めてって言ってるでしょ」
「えー、可愛くない?」
「呼び辛いだけじゃん。白浜で良いんだけど」
「俺女の子は名前で呼ぶ主義!」
知らんがな。そして私の名前は『たぐい』であって『たぐ』じゃない。何か値札みたいだから即刻止めていただきたいんだけど。と言うか名前呼びすら許してないのにあだ名って距離感どうなってんだよお前。
「たぐちゃん、かわいーじゃん!ねぇ百合愛ちゃん」
「うん、可愛いと思うよ?類ちゃんあんまりあだ名とか無いから新鮮だし!」
百合愛、君はどっちの味方なの。そしてサラッと傷抉らないで。あだ名がないって言うか、ただ単に見た目のせいで近寄りがたいって距離置かれて『白浜さん』って呼ばれる事が多いだけだから。あぁ百合愛は気付いてなかったっけ。
「ほぉら、百合愛ちゃんもこう言ってるしー」
「私のあだ名の許可を百合愛に委ねる意味」
けらけら笑う火宮と呆れる私と微笑む百合愛、端から見たら仲良し高校生って感じだろう。
実際結構仲は良いと思う。そしてそれが私の悩みの種でもある。
攻略対象とは出来るだけ距離を取りたいんだけど……火宮に関してはどうしようもないんです。
記憶が戻る前からこんな感じで普通に話すクラスメイト、むしろ普通に仲の良い男友達。今更避けようがない。
まだこいつが軽めの軟派タイプだから軽くあしらえるけど……だからこそ女の子との話し方を熟知してて対策が立て辛い。
マジで二人目で詰んだのか……笑えねぇよ。
「白浜さん、麗崎さん、火宮君、おはよう」
「あ、月花堂君、おはよう!」
「おー、おはよう!」
「……おはよ」
増えよった。いや同じクラスだから当たり前なんだけど。
昨日、何かよく分からん終わり方したからなぁ……多分回避は出来たはずなんだけど。原作知識が無いって辛い。
「月花堂君、昨日はごめんね。私の仕事だったのに類ちゃんに代わってもらっちゃって」
「気にしないで。おかげで白浜さんと仲良くなれたし」
「え、たぐちゃん何かあったの?」
「いいえ何も」
エセ王子、誤解を招くような発言をするな。
確かに百合愛とのフラグはへし折りたいけど、その他に無駄なフラグを建築する気は無い。王子様転校生との仲を噂されて体育館裏なんて願い下げだ。
「たぐちゃん……白浜さんの事だよね?」
「え、うん。可愛いでしょ?」
「私は許可してません」
定着させようとすんなよ、私は全力で拒否してやる。
「ふーん……仲良しなんだね」
「中等部からの仲だからねぇ」
「と言っても同じクラスになったのは高等部からでしょ」
中等部から目立っていた火宮だから名前は知っていたし、向こうも百合愛から派生して私を知っていたらしいけど。クラスメイトになったのは高校一年の時からで二年目だ。
去年も同じクラスだったんだよなぁ……何で思い出せなかったんだろう。ゲーム開始が今年だからか、くそぅ、もっと柔軟性持てよ!
「そうなんだ……」
「……?」
何か、めっちゃ月花堂の顔が険しいんだが。
え、まだ二日目だけも……猫かぶり甘くない?初めの頃は確か擬態パーペキだったはずなんだけど。
とは言え本人に聞くことも出来ない。擬態どうしたの?って、聞いた日にゃ私の色々が終わる、多分。
「あぁ……そろそろホームルームが始まるね」
「あー、チャイム鳴るかなぁ?一限目なんだっけ……」
時計を確認した月花堂の言葉に、火宮もつられて席を離れていく。百合愛と私は席が前後だから特に移動することもない。
何だったんだろ、あの雰囲気。百合愛も火宮も気付いてなさそうだったけど……あれ、もしかして気のせいだったのか?
あ……そう言えば結局、火宮の対策どうしよう。