無味
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「じゃぁ、頼んだぞ。」
そういって背を向ける。
「早ク寝ナサイネ。」
「わかってるよ。」
「おやすみなさ~い。」
「…早く…帰ってきてね?」
子供たちの声が聞こえる。
まったく面倒なことになった。
今日の夕方、島のそれぞれの村の代表に召集がかかった。同盟集落の船が沖で海賊に襲撃されたのだそうだ。念のためにという事で対策会議が島の反対側の町で行われるのだ。馬鹿で生意気な靑令が何かやらかさないか心配だが、知朱がいるから大丈夫だろう。後の事は保母の婁古さんに任せてあるので心配ない筈なのだが、妙に胸騒ぎがする。婁古さんはまだ若いがしっかりした人なのになぜだろう?胸が薄いからだろうか?あの胸の薄さはあれはあれでそそられるものがあるが・・・
「アナタ。今、他ノ女ノ事考エタデショウ?」
ナイフを首元に押し付けてくる妻の延由。相変わらずいい胸してる。大きさ良し。張り良し。つや良し。やっぱりこれ以上の胸はない。しかも、今はヤンデレ気味。新しい扉が今、開こうとしている。あぁ、俺って幸せだな。
「チョット、聞イテイマスカ?」
無視されて、小動物のように寂しそうに俺を見上げる延由。やっぱ可愛い。
「お前は可愛いなと思って。」
「モウ、由延サンタラ、褒メテモ何モ出ナイデスヨ?」
嬉しそうに体をくねらせている延由。ちなみにまだナイフは首元。延由が体を動かすたびに俺の首に紅く染まる…正直そろそろヤバい…
「延由…」
「ナンデスカ?」
気づいてない…だと!?
「ナイフ…っナイフ!」
「ソンナコトヨリ、誰デスカ?何処ノ女ヲ思ッテマシタ?」
目が本気だ。
「婁古さんだよ?ほんとだよ?なんか心配なんだよね…」
「婁古サンナラ、心配スル必要ハ無イト思イマスヨ」
「ま、気のせいだな!・・・・・・で、そろそろナイフおろさない?」
会合の行われる町についた。島で一番人が集まっているだけあって、もう日が沈んだというのにそこそこの賑わいを見せている。若者達がグラス片手に仲間と騒ぎ、屈強な漁師の男たちは酔った勢いでアームレスリングを始め、それを見つけた恰幅のいい店主が試合を仕切り賭博が始める。そんな平和な光景がそこにはあった。
「さて、じゃぁ俺も腕相撲♪… ぐェッ!」
「ナニ言ッテルノ。早ク会議終ワラセテ帰リマショ。」
会場に指定されたレストランは沈黙に支配され、熱血漢の議長の鼻息が聞こえる程の静けさだった。この場に集まっているのはそれぞれの村で一番腕が立つ猛者のはずだが、その場にいる全員が机にうつぶせで倒れているか、床に寝かされていた。皆一様に口からは体液がしたたり、顔は刃も弾丸も効かない巨大な龍に相対したように青ざめている。
「し、信じられない… こえまで数々の戦場を共に乗り越えてきたこいつらが倒されるなんて… 誰がこんな事をしたんだ…」
「イヤ、コレッテ…タダ酔ッテ…
「絶対に許さない!お前らの仇は俺が討つ!!」
「ダカラ……」
「あぁ、延由さん由延さんいらっしゃーっい。今、料理とお酒持ってくるね♪」
この店の料理長の非廉はナイスバディ南国褐色お姉さんである。活発でスタイル良くて面倒見もいい。家事も掃除洗濯子守は完璧。そして、料理は…
「実家に帰らさせていただきますっ!」
とてもまずい。
シチュー、ポタージュ、オニオンスープ…どんな汁物も悲廉にかかれば見栄え抜群!前菜のサラダは、オーナー兼、愛する夫である悉率が丹精込めて作った野菜を綺麗に盛り付けてプラスチックのような味に。主菜は、牛肉の脂したたるハンバーグ、おふくろの味なはずの肉じゃが、出汁のきいた卵焼き、ピチピチ釣りたて新鮮だった鮎の塩焼き…すべてにおいて、clayな味に大変身。ちなみに得意料理は鮒寿司。
「も、もしかして…もしかしてなんだけど…みんな非廉の料理食べた?」
「もちろん!みんなおいしそうに食べてすぐ寝たよー?」
「ちょっと悉率呼んでくれるー??」
「ん?なんで??」
「いいから」
ひきつった笑顔を浮かべながら殺人未遂を起こさせた罪を保護者に償ってもらうために悉率を呼んでもらう。