暴力
間が空いた…
目が覚めた。どうやら椅子に座ったまま寝てしまったようだ。
「・・・」
時計を見ると3時3分まだ遅い時間。早く着替えてベッドで寝よう。
「・・・・!」
くぐもっていてよく聞こえないが、保母の延由さんが「ナンデコンナ所デ寝テイルノ!早クベッドデ寝ナサイ!」とでも言っているのだろう。
「・・・ん―――――――!」
まったくうるさいなぁ。分かってるよ、今すぐにでも行くから。と立ち上がろうとした。しかし、立ち上がれない。両腕に痛み。これは手錠?
「・・・って!」
本当に目が覚めた。そうだ敵が攻めてきたのだった!幸いまだ4分ほどしかたっていない。そんなことよりさっきのは知朱の声だ。
「助けて!」
ヤバい、知朱が!ていうか捕まってる!どうしよ、どうしよ、どうしよどうしよ!早くどうにかしないと!
「嫌、やめて!」
「暴れても無駄だぞ~。お嬢ちゃん?」
「知朱!無事か?オッサン何してるっ!」
知朱の近くに男がいるみたいだが、椅子がガタガタ音をたてるだけで、何が起こっているのか解らない。
「もう起きたのか?坊主。」
「靑令!無事?放して!」
「知朱に何してる!」
「そうか、坊主のサーモは取り上げて何も見えてないんだったな。楽しい事始めるからお前にも見せてやるよ。ちょっと待ってろよ。」
コトッ
部屋の中のコーティング鏡が椅子の近くに移動する。鏡の中で知朱が椅子に座らされている。特に怪我などは無いようだ。しかし、ヘルメットにゴーグル、ジャケットのいかつい2000年頃の軍隊の装備に包まれた男が後ろに立って、知朱の肩に手をのせている。
「触るな!」
「坊主、ショーの初めは静かにするもんだぜ?まずはここからかな?」
そういうと男が知朱の後ろから手を回し、知朱のパジャマのボタンをはずし始めた。
「イヤーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「てめぇ!!」
「そう叫ぶなよ?近所の奴らが起きちまうだろ?でもまぁ今頃みんな永久の眠りについてる頃だがなぁ?」
「兄貴…そういう事は止めたほうが…それにまだ子供ですぜ?」
「うるせぇ!口答えしてんじゃねぇ!後でお前にもやらせてやるから、てめぇはしっかり見張りしてろ!」
「・・・」
どうやら二人いるらしい。話の内容からして、知朱が相当危ない。だけど、僕には何もできない… せめて目を閉じて、これから起きる光景を見なくて済むようにしよう。そう思っていた時。
ジュル
近くで湿った音がした。
「…ろ…」
微かにだが丘引の声がした。そういえばあいつこんな時にどこに隠れてやがんだ?
「……知朱から…その手を……どけろ…」
ジュル
「丘引!?止めて!動かないで!私は大丈夫だから!!」
丘引だって?どこに?
そう思って鏡の中を捜す。
…いた。僕の足下に。血まみれで這いずる丘引が。
「あぁん?餓鬼弐号。まだ生きてたのか?まだやられ足りねぇってか?死にぞこないが、死にな。」
男の足が振り上げられ、そのまま丘引の頭めがけて足が動く。
止まれ。止まれ。止まれ止まれトマレトマレトマレトマレ…止まれ!
グチュッ
ドサッ
鈍い音と共に赤い花が咲いた。