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日常

「コレハドウイウ事デスカ?」

 保母の延由さんが怒鳴り散らす。

「チシュモ、セイリョウモビショ濡レデス!ドウセアナタデショウ?セイリョウ! キュウインハ、コンナ事シマセン!」

 そう、遊んでいたら濡れてしまったのだ。というより、知朱を僕が濡らして僕が知朱に濡らされたのだ。

「ン、モウ風邪ヒイテモ知リマセンヨ。」

「まぁ、まぁ、そういう時もあるわな!年頃の男女なんだし?」

「由延さん、そういうのやめた方がいいと思いますよ…」

 延由さんの夫の由延がいつものように下ネタで茶化す。

「どんな風に意味を受け取ったのかな?知朱ちゃん?」

「アナタ・・・素敵デス!」

「・・・」

 この変態アロハシャツエロティックマッチョ助平親父はいつもこうなのだ。何故こいつとナイスバディな延由さんが結婚したのかが理解できない。こいつより良い男なんてたくさんいるのに…と思う。それでも昔は格好良かったのだという。攻めてくる敵を千切っては投げ千切っては投げを繰り返し、一人でこの島を守れるほどの強さだったらしい。と、これは由延さん談である。他の大人に聞いてみても誰も答えてくれる人はいない。みんな目をそらす。でも、強かったのは本当みたいで、同盟を組んでいた集落が襲われて、敵に襲われながら命からがら逃げてきた由延さんを助けたのが、延由だったのだそうだ。

「こんなのが保護者なの嫌だ…」

 僕も同感だよ。知朱。でも、僕は、…多分知朱も丘引もだけど、この二人をとても尊敬している。延由さんと同じく、この島と同盟を結んでいた集落で生まれた僕たちだけど、生まれてすぐに襲撃を受けて家族が殺されてしまった。僕たちが殺される直前に、延由さんと由延さんが助けてくれたらしい。覚えてないけど…また、この話をしてくれたのが延由さんだから由延の活躍が信憑性に欠けるのだけれど… でも、ここまで僕たち三人を12年間程育ててもらった恩は、一生かけても返せそうにない。

「ソンナコトヨリ、早ク服ヲ脱イデオ風呂ニ入ッテキナサイ。家ノ中ガ濡レチャイマス!」

「「はーい!」」


「じゃ、先に入れよ。」

 紳士な僕は一番風呂を譲ってやる。知朱に風邪をひかれると治るのに時間が掛かるため、勘弁してもらいたい。

「延由ー!靑令が『先に入れよ』だって!絶対明日は嵐だから洗濯物気を付けてね!」

「失礼な!人の好意を何だと思ってる?」 

「だってー、私がおやつにとっておいたプリンも勝手に食べちゃうような靑令が、そんな気の利いたこと言うなんて!?あんたもしかして靑令じゃない?」

「それは悪かったって。でもそれって一か月前…」

「何シテルノ!遊ンデナイデオ風呂入リナサイ!!ハンバーグ半分ニスルワヨ!!!」

「「今すぐいくよ!」」

「じゃ、先に入るね。」


 この時の僕はまだ、こんな日常が続いていくと信じてやまなかった。

 

ほのぼの終わり?

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