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凛子さんと狼くん  作者: 太郎
意識し始めた関係性
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学校祭準備期間

 

「去年も学校祭やったよね?」


 狼くんに聞いてみたら、狼くんは天井を見ながら眉間にシワを寄せた。


「あー……やっていたような気がする」

「だよね。でも覚えてないんだよね」

「俺もだ。凛子さんと遊んでいた記憶しかない」


 私もそう。基本的に仕事を与えられなかったからずっと隅っこで狼くんとトランプをしていた記憶だけ。ずっと、狼くんといたのは覚えてるんだけどね。


「けど今回の学校祭はそうはいかないよ」

「……代表だからな」

「そうそう。でも学校祭プロジェクトの人達が中心となって活動してくれるから、私達は特にやることないみたい」

「……おおっ」

「けどね。どんなことをするのか決めるのは私達らしいの」

「……クラス展示と、クラスステージのことか?」

「そうそう。それでさ、私の考えを言っても良い?」


 狼くんの前の机にお茶を置いた。すると、狼くんは軽く啜ってから低く答えた。


「…ああ」

「クラスの人を希望とって大体半分くらいにして、クラス展示担当とステージ担当に分けたいの」

「おお。良いんじゃないか」

「そう思う?良かったー」

「…ああ」

「狼くんはどっちにしたい?」

「…展示。前に出て動きたくない。ステージだとしても裏方の方がまし」

「だよねー。私も同じ考え」

「展示って模擬店も可能なのか?」

「うん。プリントにはそう書いてあるよ」

「……ほう。じゃあ、凛子さんにご飯を作って欲しい」


 無表情であった狼くんの目は突如、ランランと輝いた。まるで、悪戯をする子供の様に。


「ええっ!?」

「凛子さんの料理の腕は最高に良いんだから、ダメか?」

「ダメじゃないけど……私なんかの料理誰も喜ばないよ」


 狼くんのダメなの?ダメなの?と訴えてくるつぶらな瞳が痛い。見ないで、という意味ですっと目線を反らした。


「なら、皆の賛成を得れば凛子さんは作ってくれるのか?」

「まあ、皆が言ったら考えるけど」

「よし決まりだ」

「ろ、狼くん?もしかしてやる気なの?」


 や、やる気になってくれるのは嬉しいんだけど、私が目立つようなことは嫌だよ。それに、皆が賛成するはずがないし私が恥ずかしくなるだけだよ。


「勿論。凛子さんのご飯を堂々と食べれる良い機会だからな」

「もうっ、狼くんったらご飯のことしか考えてないのー?」

「……当たり前だろ」


 狼くんはニヤリと笑みを浮かべた。その笑みにどんな裏があるのか私は考えていなかった。



 ☆ ☆



 狼くんを(あなど)っていた。

 まさか、人嫌いの狼くんがわざわざ人前に出て模擬店という案を出すなんて思わなかった。

 うぅー。嬉しいような、悲しいような複雑な気持ちが入り乱れて頭が痛い。

 結局は皆、模擬店という案に賛成して主に料理が得意な女子やクラスの中でも目立たない男子が、展示になった。

 残りの人達は、ステージ発表である。

 私の知っている人で同じく展示なのは、加奈と黒い天使。あと他は顔が見たことあるけど、名前の知らない子。当然狼くんと私も所属している。

 学校祭準備という特別な時間の中で、私達のいる展示グループ、ステージグループと分かれて活動することにした。


「えー。じゃあ、私達は模擬店をするって言うことで良いのね?」


 加奈が私を見て同意を求めてきたので、盛大に頭を縦に振って答えた。


「うん。皆はさぁ、何作りたい?」


 その加奈の言葉をきっかけに皆、話始めた。


「やっぱり、たこ焼き?」

「お好み焼きは?」

「どら焼き!」

「焼き物好きだね。普通にパフェは?」

「溶けちゃいそうじゃん。健康ジュースみたいなの作りたーい」

「無難にお茶と和菓子じゃダメなの?」

「お茶点てたいな」

「お面売りたい!わたあめ、わたあめ!」

「えっと、お祭りでしょー?何か、美味しいのでいいんじゃない」


 うぅむと首を捻る。色んな考えがありすぎてなかなか一つに決まらない。

 今までのをまとめると飲み物と焼く物とデザートが作りたいらしい。だから……と。口を開いた。


「……ジュースと焼くのとデザート。全部作ったらどうなんだろう?」


 ぼそっと呟くと皆の視線が私に向いた。


「え、ええ。変なこと言いました?」

「ぜんっぜん。変じゃないよ。むしろ纏まった」


 誰かは分からないけど、女の子に肩を掴まれて微笑まれた。むむ、可愛らしいなぁ。と考えていると、後ろにいる狼くんに背中をつつかれる。狼くんはエスパーですか?


「じゃあ、展示の中でも更にジュース、メイン、デザートで別れれば良いってことだね?」

「お、良いね」

「賛成ー」


 次々に女の子が口を開いて圧倒されて、一歩後ろに下がると狼くんにぶつかった。


「あ」

「……よくやった」


 ぽんぽんと、頭に手を乗せて撫でてくれた。思わず顔が緩んでしまう。にやにや、だらしないのは分かってるんだけどどうしようもない。


「うふふー」


 とにかく、大まかな内容は決まったみたい。

 私と狼くんは皆が各自決まってから、余ったメインに入れられて、大体の内容が決まったことにより、その日は解散となった。




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