1章
サウンドノベル作品のシナリオ抽出版です。
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ある日女になる夢を見た
夢の中の私はとても臆病な思慮深い子で
友達と一緒に遊びたかったけれど
喧嘩になる事や嫌われる事をおそれ
友達の輪に入る事を躊躇してしまう
今すぐ友達のもとへ駆けようか それともやっぱり一人でいようか
そんな思いが錯綜して体が揺れ その振動で肩まである髪も揺れた
そんな風に友達を見つめる私をそしらぬ顔で夢見る僕は
女になっているというよりその子の気持ちが分かるという方が正しいのかもしれない
―――
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夢から覚めた途端に僕は気分が滅入ってしまった。
あの夢の女の子が仮に僕だとして、何故その様な事を考えたのだろう。
現実の僕は考える事が面倒で、全てなりゆき任せだし、勝手気ままに振舞っている。
小学校のクラスでも友達は多いほうだと思うし、
今年3年生になりクラス変えを二度経験しているけど、
今でも1・2年の時一緒だった友達とも遊んでいる。
そんな僕が夢の中でも、あんな悩みを持つ意味がわからなかった。
実際あんな事を感じたのはあの夢の中だけしかない。
だからこそ、夢の中の感情はとても気持ち悪かった。
「んー7時か」
いつもなら起きる時間だけど、今日は日曜日。
目覚ましのセットをしてないからアラームはならないし、
両親とも既に出勤している時間だ。
このまま二度寝をしようとも思ったけどあの夢をまた見るかもしれない。
そう思うと寝たくなくなってくる。
僕は渋々布団から抜け出しカーテンを開けた。
薄暗い部屋が急に明るくなり、目が痛くなるほどの陽射しについ目を閉じてしまった。
「珍しく晴れてるなぁ」
ゆっくりと目を開きながら空を見上げると久しぶりに青空が広がっている。
入梅してから1週間ずっと雨が降っていたため、今日も雨が降ると思っていた。
今日は外に出てみるか、久しぶりに外で走るのも楽しそうだし。
そう思うと僕はすぐに着替えに取り掛かり、顔を洗いキッチンへ向かう。
テーブルにはポテトサラダと食パンが置かれていたけど、
食パンを1枚焼かずに持ち出して外に出た。
特に目的があって外に出た訳でなく、
ただお日様を久しぶりに浴びたかったから外にでたのだけど、やっぱりイイ。
ジメジメとしていた昨日までと違い、乾いた風を受けるのは心地よい。
何も手を加えてない食パンでさえおいしく思えるし、毎日通る通学路でさえ表情が違って見える。
そうやってあちこち見回していたら毎日通っている通学路のはずなのに、
見覚えが無い通路を発見した。
石垣のように石が積まれた壁に沿って竹が走り、所々から水が流れている。
どうやらこの辺りに蛙がいるようだ。
溝の中に流れる水は透き通っていたが声をたよりに蛙を見つけることはできず、
何気なく触ってみた水にはとても冷たい。
昨日までの雨で土中の溜まった雨水がここに集まっているのかもしれない。
こんな物は今まで見たことがない、この先にも何かあるのかも。
近所に出かけただけなのにまるで探検をしているみたいだ。
僕はこの先にある物を求めてつい走り出してしまった。