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第20話 この動画『バズってくれ』

==========

リンク:

i tube://watch?v=J9rt82LmXc

【大考察】佐藤太一は卑怯者!

視聴者:102,384 高評価:4.4万 低評価:1万

==========



(俺が卑怯者……どういうことだ?)


 ふと目に入った動画。


 他の配信者たちが祝福の動画をアップしている中、この動画だけは批判的な雰囲気を放っていた。


 タイトルもだが、サムネの画像に大きな文字で『佐藤太一は迷宮を攻略していない!?』と書いてある。


 いや、俺、ちゃんとボス倒したんだけどな。

 俺の剣でトドメを刺したんだけどな。


 気になったので、ポチッと再生してみた。



==========

「どうも皆さん、こんにちは〜!

 異世界考察チャンネルの〜、

 ケントと、タイガですっ!」


(うわ、この感じめっちゃ懐かしいな!

 すげぇ安心するわ。

 異世界でもYouTuberは変わんねぇな。

 いや、今はITuberか?)


 出てきたのは、2人組の日本人。

 ケントは、メガネをかけたインテリ風の細身青年。

 タイガは、金髪小太りのテンション高め青年だ。


「おい、ケントさん!

 今、噂になってる『佐藤太一』って知ってるか?」


「もちろん知っていますよ。

 人類初の迷宮攻略という偉業を成し遂げた方です」


「そりゃ知ってるに決まってるか!

 異世界中で話題になってるもんな!


 いやー、あの攻略通知が来た時はビビったよね。

 俺、迷宮探索中だったのに思わず叫んじまったよ。

 「いや、誰だよ!」って。

 そのせいでモンスターに囲まれて大変だったわ。

 ハハハハハ!」


 タイガが冗談を交えながら、話を進めていく。

 典型的な考察動画って感じ。

 俺はけっこうこういう動画が好きだ。

 マンガ考察動画とか時々見てたし。


 ちなみに、ルナリアも動画を見たそうにしていたので、一緒に視聴することにした。

 立ち止まって、2人で画面を見る。


「はい、私もとても驚きました。

 ついに誰かが迷宮を攻略したと思ったら、上位ランカーでもない無名の日本人でしたからね。

 まったくの予想外でしたよ。

 そのせいで、以前アップした『誰が最初に迷宮を攻略するのか考察してみた』動画は完全に的外れな動画となってしまいました」


「ケントが予想を外すなんて思わなかったわ!

 まぁ、これは当てらんないわな。

 てか、マジで佐藤太一って誰だよ!」


「私も気になって色々調べてみました。

 そしたら、なんと、

 驚愕の『可能性』が浮かび上がったんです」


「え、なにそれ!

 めっちゃ面白そうやん!

 聞かせてくれよケント!」


(俺も気になる!

 聞かせてくれケント!)


「あの攻略通知を見た瞬間、私はすぐに『総合ランキング変動ログ』を確認しました。

 佐藤太一なんて、よくある名前ですからね。

 ちゃんと特定するために、直近でランキングを大きく上げた『佐藤太一』を探そうと思ったわけです」


「なるほど、ログを確認したのか!

 めっちゃ賢いな!

 それで、佐藤は見つかったのか?

 ランキングは何位だったんだ?」


「焦らないでください、タイガさん。

 ちゃんと見つかりましたから。

 彼の現在の総合ランキングはなんと、

 『101397』位です」


 どうやら、俺は101397位らしい。

 そういえば、『i ranking(アイ・ランキング)』を確認し忘れていた。

 あまりランキングとか興味ないからな。

 何位でもいい。


「え、総合101397位!?

 もっと高いと思ってたわ。

 たしか、迷宮ランキングは1位だったような?

 総合と迷宮で、そんなにも差があるのか」


「迷宮ランキングと総合ランキングは、ランキングの算出方法がまったく違いますからね。

 迷宮ランキングは『迷宮をどれだけ攻略したか』、総合ランキングは『総合的なステータス値』を算出して、全人類をランキング付けしたものになります。

 迷宮ランキングと総合ランキングに相関がなくても、なんら不思議なことはありません」

 

 ケントが眼鏡をクイっと上げながら答える。

 ちゃんと頭脳派キャラを演じているのだろう。


 俺の知らない事を教えてくれるので、考察とか関係なく、非常に勉強になる良い動画だ。

 チャンネル登録しとこう。


 ケントは続けて言う。


「――ですが、私もそこに違和感を感じました。

 全人類の中で最もステータスの高い総合1位のマークでさえ、最近ようやく☆2ダンジョンの第2階層に到達したばかりですから。

 10万位といったら上澄みの部類には入るものの、それでも☆2ダンジョンの完全攻略は不自然です。

 何かカラクリがあると、私は考えました」


 なるほど。

 人類最強のマークさん?ですら第2階層に到達したばかりなのに、ポッと出の俺が急に同レベルの迷宮をあっさり攻略してしまったわけか。


 俺、怪しすぎるだろ!


「だよな、おかしいよな!

 絶対、裏があるよな!」


「はい、そこで私が注目したのが例の『通知』です。

 スクショを撮ってあるので、今一度お見せします」


==========

佐藤太一さんと他1名が、

☆2ダンジョンを攻略しました。

==========


「あー、コレコレ!

 全人類を驚愕させた通知ね!

 これになにか秘密が隠されているのか?」


「はい、そうです。

 この『他1名』という表記に秘密があります。


 というのも、パーティーを組んで中ボスを倒した場合、これまでは少なくとも2名の方の実名が明記されていたのに対し、今回の通知で実名が明記されたのは『佐藤太一』ただ1人なんです。

 ――彼とともに迷宮を攻略した『他1名』の実名が伏せられた理由、それは、その方が『亜人』だったからなんです!」


 デデデンッという効果音とともに、

 ケントがドヤ顔でカメラを指差した。


 たしかに、ルナリアはエルフだ。

 人間ではない亜人だ。

 ちゃんと当たっている。

 すごい。


「過去の動画でそんな感じの考察をしていたな。

 ドワーフや獣人といった亜人たちの名前は、ランキングにも通知にも表示されないって」


「はい、そうです。

 亜人と協力して中ボスを倒した冒険者はこれまでに何人かいますが、彼らの『中ボス討伐通知』には冒険者の実名のみが表記され、亜人の方の名前は『他何名』と省略されていました」


「ということは、つまりアレか!

 佐藤太一は実力のある亜人に『キャリー』してもらって迷宮を攻略したと、そういうことなのか!」


「確実にそうでしょうね。

 上位ランカーでもない彼の実力では、ダンジョンのボスに傷をつけることすら難しいはずです」


(いや、ちょっと待ってくれ!

 俺、ちゃんと傷をつけたぞ!

 なんなら一刀両断してトドメを刺したんだが!)


「うわーマジかよ!

 じゃあ、佐藤太一は実際にはダンジョンを攻略していないってことになるんか。

 あの興奮を返して欲しいわ〜」


「正直、残念ですよね。

 特に、我々日本人の落胆は大きいでしょう。

 攻略したのが日本人ではなく亜人だったなんて」


「皆、この通知に勇気づけられていたからな。

 この事実を知ったら、そりゃ落ち込むわ。

 てか、亜人の力借りるのズルくない?」


「悪いことではないですが、モヤッとはしますね。

 『人類初』の価値が下がってしまいましたから。


 まぁ、今回話した内容はただの『考察』です。

 佐藤太一さんが本当に迷宮のボスを倒した可能性もまだ残っていますので、今後もこの件については追って考察していきたいと思います」


「それでは、また次回の動画でお会いしましょう!

 さようなら!」


 ズンチャ、ズンチャ(エンディング)

==========



 動画が終了した。


 ……。


 沈黙の時間が流れる。


「サトーはちゃんと戦っていたわ。

 落ち込む必要なんてないわよ」


 ルナリアが背中をサスサス撫でてくれた。

 俺を気遣ってくれているようだ。


 だが、俺は別にそこまで落ち込んでいない。


 沈黙していたのは、考え事をしていたからだ。

 そしてたった今、結論が出た。


 たしかに、俺も命を懸けて戦ったので、「あいつは何もやっていない」と言われるのは不本意だ。

 嫌な気持ちにもなった。


 それでも、ルナリアの手を借りたのは本当だし、この少女がいなかったら俺は死んでいたのも事実だ。


 このYouTuber…… ITuberは間違っていない。

 すごく的を得た考察だった。


――そして、それ以上に。


「この動画がバズったら、世間の俺に対する注目が減ってくれるかもしれない!

 俺は自由気ままに冒険したいんだ!

 有名人になんてなりたくないんだ!

 頼む、この動画バズってくれ!」


 俺は全力で、グッドボタンを押した。


 そんなポジティブすぎる俺を、ルナリアはポカンと見つめ、そして最後にふっと笑った。


「サトーは面白いわね」


 世間の評価なんてどうでもいい。

 俺は自由に、この世界を楽しむんだ。


 スマホをポケットにしまい、再び歩き始める。

 俺とルナリアは2人楽しく話しながら、次の目的地である『アイテム交換所』へと向かった。


(あれ、そういえば。

 魔王から貰ったスキルって、ちゃんとステータスやランキングに反映されているのか?

 少なくとも、ルナリアは画面の文字(スキル名)でさえ認識することができなかった。

 もしかすると、俺のステータスやランキングは低く見積もられているのかもしれない。


 まぁ、どうでもいいか!)


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