先生/英雄と呼ばれた男
ベルン学園。魔術師を育成する専門の学園であり、各国から実力と名誉ある人材が集まる場所でもある。
そんな学園に新たな先生が赴任することになった。その知らせは学園内外に瞬く間に広がり、新聞には特集記事まで組まれた。
記事を読みながら苦笑いする俺、アルク・ハーゲンは馬車に揺られながら外を見る。
「ベルン学園か……懐かしいな」
そう言うと突然馬車が止まる。何事かと思い飛び降りると、巨大なオークが道を塞いでいた。
聖剣を思わせる大きな片手剣を鞘から引きぬいて構える。
「魔物退治か。俺の周りはこうトラブルばっか起きるなぁ」
オークに視線を合わせ、剣に炎の魔力を込める。巨大な棍棒を縦に振り上げるオークよりも早く詠唱する。
「炎・一閃!」
オークが横真っ二つに斬れると同時に、灰となって消える。その様子を見た運転手は思わず尋ねていた。
「お前さんは一体……」
「アルク・ハーゲン。ベルン学園の先生だ」
♢♢♢
オークが出るという問題はあったものの、無事に辿り着いた。校内に入ると真っ直ぐに校長室へ向かう。
三度ノックをして校長室の扉を開ける。
「失礼します」
椅子に座って待っていたのは、大きな帽子を被ってヒゲを生やした老人。校長だ。
「久しぶりだねアルク。いや、英雄様」
「今は元ですよ、校長」
「まあまあ座りなさい。君に話したい事がある」
校長は短杖を振って椅子を召喚した。
「魔力は衰えていないようですね」
「はははっ。動かないからな、そう簡単に魔力は減らない」
椅子に座ると軽口を叩いていた校長が真剣な表情になる。
「君を呼んだのは他でもない。この学園を救って欲しいからだ」
「話には聞いています。生徒の突然の失踪、死亡事件。先生方も狙われているとか」
その言葉に校長は神妙な顔をする。一年前からベルン学園を狙った事件が多発している。犯人は不明。魔物の恐れもあり、ギルドや自警団も警戒を強めているがそのような気配もない。
校長は俺の目を見据えると、指を三本立てる。
「ここでの君の役割は三つだ。先生として生徒を卒業させること。この学園内にいるであろう裏切り者を探すこと。そして、魔王の残党を始末すること」
「やることが多い……」
そう言ってため息をつく。魔王の残党はともかく、学園内に裏切り者がいる事実は知らなかった。校長は何故知っているのか。
そんな俺の疑問もよそに、校長は一枚の紙を机の引き出しから取り出す。
「さて、生徒たちを君に紹介しなければ」
全校生徒の前で紹介されるのだろう。そう思っていたが、紙には六人の生徒の情報が書かれていた。
つまり、俺が受け持つ生徒は六人ということか。
「以外に少ないですね、俺の生徒」
「君には特別な生徒を担当してもらうからね。訳アリの入学者だ」
訳アリ……か。元英雄の俺も十分訳アリの部類に入るが、校長は見越しているな。
生徒の情報が書かれた紙を読んでいると校長から声がかかる。
「もうすぐ全校集会も終わるだろう。生徒が待っているはずだ。行きなさい」
俺は立ち上がり、校長に頭を下げて校長室を後にする。目指す場所は三階の奥にある教室。
二度目の学園生活はどんなものになるか。校長の言う役割より、今は期待の方が大きかった。




