ハーレム勇者パーティを卒業した私は、スローライフに失敗しました
勇者チットと言えば、泣く子も黙る王家お墨付きのパーティ。世を騒がせる魔王討伐の為に王家がバックについていたから、高級バックだって王家御用達のお店でタダ同然で手に入れられた。勇者チットに誘われた時点で私は勝ち組のはずだったのよ⋯⋯。
「約束が違うじゃない、最低!」
勇者チットは婚約者の王女から婚約破棄を言いつけられ追放された。王家の後ろ盾のない勇者なんて、ただの強いだけのクズだ。
「はぁ? お前らが好き勝手に買い物して金を使い込んだからだろうが!!」
「何でも好きな物を買ってやると言ったのあんたでしょ!」
このままでは魔王を倒す前に国家が破綻する‥‥勇者パーティが追放されたのは、その無駄遣いが要因なのは確かな事だ。買い物の大半も、勇者が次から次へと女に贈り物をしたせい。
追放後、魔法職の私はパーティから離脱。装飾品の大半が没収されて泣いた。勇者パーティに入って損したわ。
ムカつくので元勇者の奴が贈り物した相手全部、王女にチクッてやったよ。彼女と裏取引をしたおかげで、私の散財の罪は消えた。それに今後生活に必要な、装飾品も返してもらった。
私が言うのも何だけど、ハーレム勇者との縁が切れて、真面目で実務向きな魔王が婿に来て良かったわね。話せる王女に真面目な魔王。何で魔王していたのかわからないくらい優良だよ。
チット? 知らないわよ、あんな男がどうなっても。こっちはね、忙しいの。倒すべき相手が婿入りし、冒険者よりも通訳のこなせる魔法職が必要になったわけ。
「魔王様からは逃げられない────貴女ならわかるわよね」
真の魔王はここにいたよ。王女の圧が強いせいで、お人好しの魔王まで従えたように見える。黒幕が王女だったなんてとんだ茶番ね。
「軽口はいいから働くのよ」
⋯⋯私は王女の秘書にされた。取引きの最中、王家の秘密に気づいてしまったせいだ。
「追放はどうなったのよ?」
「追放は勇者だけよ」
「あっそう」
やっぱこの女怖いわ。破綻しかけている財政を立て直す為に、魔王騒ぎを起こしたのは彼女だ。勇者チットを利用して、王家御用達の商家を使わせ意図的に潰したのだから。
「勇者の甲斐性なんて関係なかったのね」
王家の後ろ盾を利用していたのは勇者だけではなかったわけ。私がそれを指摘した時にニヤッと笑った王女の顔は忘れられない。
溜まった埃をすっかり掃除し、王国はゼロから新たな年を迎える事になる。
私は黒幕の右腕として、幸せになるのだった。
打ち止めのつもりでしたが、最後の大掃除ネタを忘れていたので投稿しました。
お読みいただきありがとうございました。すっきりお掃除を済ませ、皆様がよいお年をお迎え出来ますように。