知らない女
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
アーレンは宿屋の外にいる。
「誰もいないな」
アーレンは周りに人がいない事を確認して外套を脱いだ。
「アーレンさん…」
後ろから女の声がする。すぐさまアーレンは脇に置いていた外套を羽織った。
「誰ですか?」
アーレンは振り向いて女に声を掛ける。後ろにいたのはアーレンの知らない女だった。
『初めてみる顔…どうして私の名前を?』
「失礼しました、他に声を掛ける機会がないと思ったので…」
女は恐縮している。
「いえ、責めているわけではありません」
アーレンの言葉を聞いて女はニコリと笑う。女は回復魔法の魔導書の中に消えて魔導書はアーレンの剣と一つになる。
「えっ…」『…精霊だったのか』
剣の刃の片側刃元には新たに橙色で楕円の玉が付いていた。鞘も変形している。
「呪文の詠唱という形で呼んで頂ければ力添え致します」
癒の精霊は再びアーレンの前にいた。
今までの精霊は事前に姿を現している。そして何かの礼として魔導書を玉にしていた。
「どうして…魔導書を剣と一つにしてくれたんですか?」
「あなたの為に何かをした記憶が私にはありません」
アーレンは癒の精霊に聞く。癒の精霊は微笑んだ。
「気になさらないで下さい、私の勝手な…せめてもの気持ちなんです」
「迷惑ではありませんよね?」
「それは…はい」
癒の精霊に問われてアーレンは自分の剣を見る。剣士のアーレンにとって魔導書を開かずに魔法が使える事はありがたい。単純に荷物も減る。
「でも…」
アーレンが再び前を向くと既に癒の精霊はいなかった。




