出迎え
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
アベルは騎士の鍛錬を欠かさない。将来、強くなれば出世して自由に兄カインを探しに行けると信じていた。今日も鍛錬に励んでいる。
『あれ?門の外にいるのって…』
「兄さん!」
アベルはカインに気付いて急いで兄のもとへ向かった。そして門扉を開く。
「やっぱり兄さんだ!兄さん!兄さん!…」
アベルは浮かれて燥いでいる。
「ただいま、大きくなったねアベル」
カインは燥ぐアベルに声を掛けた。
「兄さん、帰ってきてくれたんだね」
「鍛錬を続けて強くなって兄さんを探しに行こうと思ってたんだよ」
「あの時は兄さんの秘密をバラしてごめんなさい」
アベルはカインに想いを伝える。騎士の鍛錬中にアベルの怪我を治した事でカインは魔法が使える事をガルドに知られた。その事をアベルは気にしている。
「アベルは何も悪くないよ、僕も秘密にしようなんて思ってなかったんだから」
カインはアベルを諭す。変わらず優しい兄を知ってアベルは笑顔になった。
アベルは後ろにいるアーレンの存在に気付く。
「この人はアーレンさん、僕はアーレンさんと一緒に冒険者をしているんだ」
「アーレンです」
「アベル…です」
カインに紹介されてアーレンとアベルは互いに名を名乗った。アベルの様子がおかしい。
『兄さんと一緒…俺の兄さんなのに!』
アベルはアーレンに嫉妬している。
『私は嫌われてしまったかな…』
アーレンはアベルの様子に気付いたがカインは気付いていない。
アベルがカインの手を引いてカインとアーレンはナイトラン家の敷地に入る。
「おかえりなさいカイン!」
ディアナも駆けつけた。すかさずカインを抱きしめて頭を撫でる。
「ただいま継母さん、恥ずかしいです…止めて下さい」
「ダメよ、勝手にいなくなった罰として思う存分ヨシヨシさせて!」
「…あっ、一人じゃなかったのね」
しばらくカインの頭を撫でてからディアナはアーレンに気付く。アーレンは気を遣って目を逸らしている。
「一緒に冒険者をしているアーレンさんです」
ディアナの抱擁を逃れてカインはディアナにアーレンを紹介した。恥ずかしさでカインの顔は赤い。
「初めましてアーレンです」
「息子が世話になっています、継母のディアナです」
アーレンとディアナは名乗り合った。