最強の回復魔法
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
侵入した部屋は広い。そこは謁見の間だった。大勢の男達がいる。カインとアーレンは不可知の魔法を解いた。
「侵入者か、後で見張りを罰しないといけないな」
玉座に座る男は動じていない。その男にとってカインとアーレンの存在は取るに足らない事だった。
「あなたがファイアンド国の王ですか?」
「王には違いないな」
王がアーレンに答える。
「そんな事…人間如きに関係あるのか?」
「…殺れ」
王の言葉で周りにいた御付きの者達が魔人の正体を現わして襲い掛かった。
「我に従う風の精霊…」
「ウィンド・スラッシュ!」
襲い掛かる全ての魔人達をアーレンは魔法の風斬撃で斬り付ける。
『一撃では無理か…』
「全体攻撃!アーレンさん凄い!」
カインの反応にアーレンは微笑んだ。
「まだだカイン」
「ウィンド・スラッシュ!」
再びアーレンは魔法の風斬撃を魔人達に放つ。魔人達は魔石となった。
やはり玉座の王は動じていない。
「上位の魔人もいたんだがな…」
「…私が殺るしかないのか」
王は立ち上がる。そして魔王の正体を現した。
「アーレンさん、あれは僕に任せてもらっていいですか?」
「試してみたい魔法があるんです」
「分かった、気を付けるんだぞ」
「城内に充満している威圧感はあれが原因だと思う」
「分かりました」
魔王はカインが相手をする。と思った時には魔王が魔石となっていた。
『上手くいった!けど…なんか違うな』
魔王は討伐したがカインは納得していない。
『詠唱をしていないという事は回復魔法か』
「相変わらずだな」『…強かったであろう魔人を瞬く間に倒してしまった』
アーレンは呆れている。カインのデタラメは今に始まった事でない。
玉座が置かれた檀上の低い位置に男が一人だけ残っていた。その男こそファイアンド王である。
『あの魔王を瞬殺?』
『鎧、魔法、剣も持っている…あれが竜を倒した"剣士と魔法使い"か!』
王はカインとアーレンの正体に気付いた。
「あなたが本当のファイアンド王ですか?」
アーレンに聞かれて王は頷く。王は言葉が出ない。魔王の最後を見て腰を抜かしている。
「あなたは幻惑で操られていませんね?」
アーレンに聞かれて再び王は頷く。
「ファイアンド軍がウィンダンド国を侵略した事でどれだけの人が傷付いたか…」
「あなたは分かっていますか?」
アーレンは王を問い詰める。
「うるさい!」
「いつ殺されるかも分からない恐怖、お前に分かるのか!」
王はアーレンに掴み掛かった。実際に戦争で殺された人間の事を王は分かっていない。
「その手を離せ!」
アーレンを掴む王の手をカインが掴み睨む。王の勢いは消えた。
「許して下さい…」
やっとの声で王が謝る。王は失禁していた。魔王を瞬殺するカインが魔王以上に怖い。
「二度と侵略なんて馬鹿げた事をしないで頂きたい」
「私達は見ています、何度も許す事はありません」
アーレンは王に伝えた。
カインとアーレンは謁見の間を出ていく。そして見張りの兵士が駆け付けた。
「賊の侵入を許してしまいました、申し訳ありません」
「直ぐに賊を追います」
「止めろ!あの二人に手を出すな」
「手を出さないでくれ…」
直ぐに動こうとする見張りの兵士を王は止める。カインの力とアーレンの言葉が何よりも王は怖かった。