途中の町
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
騎士と剣士になったカインとアーレンは城下町へ向かう。カインはギルドで聞いた話をアーレンに話した。
「なるほど、確かに依頼を果たせればジョブなんて関係ないな」
『ただ登録する理由があるなら確認ぐらいしたほうがいいんじゃないだろうか』
ギルドで聞いた話についてアーレンもカインと同じ事を思う。
現れる魔物を討伐しながらカインとアーレンは進んだ。
「以前よりも魔物が増えた気がしませんか?」
「確かに多いな、どういう事だろう」
カインとアーレンはファイアンド国の変化を感じている。町を見つけ、その町のギルドに立ち寄った。
「戦争に駆り出されて冒険者が減りました」
「魔物も増えて…本当に国は余計な事しかしません」
ギルドの担当者は愚痴っている。
「お二人も戦争帰りなんですよね?」
「お疲れ様でした」
「あっ、ありがとうございます」
カインとアーレンは思いがけず担当者に労われた。
建物の外が騒がしい。カインとアーレンが建物の外に出ると町の人間が暴れている。
「えっ?」『…そうか、魔人の幻惑だ』
直ぐに気付いてカインは回復魔法を発動させた。視界の中にいる人間は大人しくなる。
『やっぱり幻惑で操られていたのか』
カインの想像通りだった。しかし騒ぎが収まらない。
「アーレンさん、町の中を回りましょう」
「幻惑を回復させるんだな」
「はい!」
アーレンとともに町の中を回ってカインは回復魔法を発動させていく。
大人しくなっていく町の者の中にアーレンは妙な女を見つけた。
「カイン、待ってくれ」
「はい…どうしたんですか?」
「あの女、妙だと思わないか?」
アーレンの指差すほうに女がいる。単純に大人しくなる他の人間と違って女は周りの人間ばかり気にしていた。
「あの女も最初は暴れていたが…」
「他の人間が大人しくなってから遅れて暴れるのを止めたんだ」
「そして今は周りの人間ばかりを気にしている」
女の違和感をアーレンは説明する。
「魔人かもしれませんね」
「あぁ」
「カインは引き続き町の人の幻惑を回復してくれ」
「私はあの女を見張る」
アーレンはカインに作戦を伝えた。カインが心配そうな表情になる。
「心配するな」
「自動全回復の魔法で封印も自動で回復するようになっただろう?」
「あの女が上位魔人であっても大丈夫だ」
アーレンは真っ直ぐにカインを見つめた。アーレンの目を見てカインは頷く。
「お願いします」
カインは幻惑の回復に戻った。
アーレンは物陰に隠れて女を見張る。
「我に従う風と光の精霊…」
「我が魔力を糧として我へ不可知を与えよ、アンノア」
物陰に隠れると同時にアーレンは魔法で自身の姿と音を消した。しばらくしてから魔人と目される女が移動する。アーレンは女を尾行した。