魔導書屋
この物語はフィクションです、実在の人物や団体とは関係ありません
「」で囲まれた箇所は口に出した言葉、
『』で囲まれた箇所は心に思った言葉、になります
魔導書屋の場所をカインは覚えている。魔導書屋は大通りから脇道へ入った場所にあるはずだった。
『あれ、看板が出てないな…』
カインは不安を感じる。しかし魔導書屋は覚えていた場所にあった。
「いらっしゃい」
魔導書屋の店主が出迎える。店主は別人だった。
「ありがとうございました」
魔法使いは礼を言ってから魔導書を探し始める。
「今日は看板を出してないんですね」
「看板…何の事ですか?」
「えっ?」
カインが以前に来て見た看板の話が店主には通じない。カインが以前に見たのは未来での事である。
『あっ!』
「大通りにある店じゃないので店へ誘導する看板があるのかなと思ったんです」
店主にとって変な事を言っていると気付いたカインは慌てて誤魔化す。しかし「今日は」の説明になっていない。
「あぁ…看板があれば分かり易いですもんね、参考にします」
店主はカインを深く追求しなかった。
カインも魔導書を探す。しかし購入しようと思っていない。
『売っているのは基本の魔法だけの魔導書だったよな』
以前に来た時の事をカインは思い出していた。
『あれ?水魔法の魔導書がない…』
『…そして光魔法の魔導書が売ってる』
カインは品揃えの変化を感じている。
「光魔法の魔導書って売れないんですよね」
店主が話しかけた。
「あぁ、光魔法って使うのが難しいですからね」
「僕達も色々と教えてもらうまで使い方が分かりませんでした」
『…という事は使っているのか、このお客さん』
カインの話を聞いて店主は感心している。
「水魔法の魔導書って取り扱ってないんですか?」
「ウォータンド国の魔法ですね、今は取り扱ってません」
「いつか取り扱いたいですね」
店主はカインに答えた。
魔法使いは火魔法の魔導書を購入する。
「お買い上げありがとうございます」
店主は礼を言った。カインは購入していないので心苦しい。
「これで今月のお客様が二人になりました」
「またいらして下さいね」
店主はニコリと笑う。今月は今日まで客がいなかったらしい。
カインは魔法使いと一緒に魔導書屋を後にする。
「回復魔法の魔導書しか持ってなかったので助かりました」
魔法使いがカインに話し掛けた。火魔法の魔導書を購入できて喜んでいる。
「火魔法は使い勝手がいいですからね」
カインは答えた。喜ばれてカインも嬉しい。大通りまで出てカインは魔法使いと別れた。