入学式の日の朝
時刻は朝の七時。学校の門をくぐった平之瀬は、校舎の前で待っている担任の綾井先生に出迎えられた。
「おはよう、平之瀬くん」と、綾井先生が優しく声をかける。
「おはようございます!」平之瀬は元気よく返事をした。
「綾井先輩、小学生たちを連れて体育館に行って入学式の準備をすればよいですよね!」と、平之瀬が尋ねる。
「おや、今から言おうとしていたことを…」と綾井先生は驚きの表情を見せる。
「はは、じゃあ、小学校校舎の方に行ってきます」と平之瀬は笑顔で言いながら、小学校の校舎へ向かう。
校舎に着くと、小学生たちがすでに集まっていた。「みんな、おはよう」と平之瀬が声をかける。
「平之瀬くん、おはよう!」と悠が元気よく返す。
「おはよう、今から準備?」と奈々も微笑みながら尋ねる。
「そうだよ」と平之瀬が答えると、悠は少し不安そうな顔を見せる。「えー」
「めんどくさがらないの」と奈々が笑いながら言う。「悠、せっかくこんな学校に来るんだから歓迎しないとダメでしょ」
「確かに」と悠も納得する。
「流石奈々さん、人を手名付けるのが上手い」と平之瀬は感心しながら思う。あれこれ考えているうちに、平之瀬はこの島の現状を思い返す。島はいま過疎化が進んでおり、小学生は5年生の悠と6年生の奈々の二人だけ。中学生は、中3の自分と、今年入学する中1の中小宝石さんの四人だけだ。今年はそれにしても人数が少ないが、これからの入学式の準備がしっかりと進むように、平之瀬は気を引き締めた。