年相応な君に
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
こんなところがきっとあると思ってます。
「お祭りだけど、はぐれちゃ駄目だよ。君、好物見掛けると直ぐに何処かに行ってしまうから」
「善処します……」
身長差歴然、傍から見れば親と手を繋ぐ子供のようなその様で、僕らは祭に来ていた。僕が見上げなくてはならない所にある頭に向かって声を掛けると、少し反省した様な声で帰ってきた。
見掛けは至って普通の一般人。女性の平均身長で、間違っても子供には思われない。けれども中身が結構な幼女である。目先の興味に惹かれて姿を眩ませたのは数知れず。探し出すと、買い上げたお菓子片手に佇んでいるなんてザラだった。だから、はぐれない様に手を繋ぎ、欲しいものがあれば一言言うように伝えて今に至る。
「橙木様。あんず飴、あんず飴買いましょう」
「分かったよ」
爛々と目を輝かせ、長蛇の列を指さした。最後尾に並んで暫く待つ。その間も手を繋いでおく。突発的に姿を消したり、買い食いをしたり、自分に甘いところは数知れず。けれども人の迷惑になる様な事はしなかった。
そうして漸く後、二、三手という処。大きな隙間が出来たから、詰めようとしたその時に、通り係の人間が、割り込みを行った。それをされてい不愉快にならないかと言われれば、不愉快だった。物凄く。彼女もそれは思った様で、眉間に皺を寄せて、不機嫌さを顕にしていた。
やっかみもあったけれど、僕らの番になった時、店員は申し訳なさそうに頭を下げた。
「申し訳御座いません。ただいまので売り切れで御座いまして……」
「あ、そうですか……」
彼女はただぽつりとそう言って、静かに頭を垂れる。せっかく数十分も並び続けたのに、割り込みをされなければ、手に入ったのに。その様はあんまりにも可哀想だった。
人混みを掻き分けて、近くのベンチに腰掛ける。腰掛けても頭一個分低いので、軽く肩を叩いた。
「ごめんね。少し頭を下げてくれると」
背筋を曲げて頭を垂れる。掌を頭の上に乗せて、流れに沿って下る。頭を撫でてやる。今の僕にはそれしか出来ない。此処では僕は部外者で、灸を据えてやる事も何一つ。歯痒いね。だからこれは、彼女の慰めと言うよりも、僕の罪滅ぼしな気がする。
「よく我慢出来ました。代わりに何か買ってあげる」
「それくらい、私も我慢出来ますよ」
彼女はそう不敵に笑って、頭を上げた。
「橙木様、食べ放題いきましょう。今から」
「付き合うよ」
オマケ 食べ放題にて
「焼きたってってなんでこんなに美味しいんでしょうねぇ。ふわふわもっちもちです」
「そう。良かったよ。こら、食べてる時に端末弄らない」
見掛け成人と中身成人のあべこべでお送りします。
食べ放題一緒に行ってるので、ある種のパロディですね。
自分に甘いところがあって、歳をとる事に幼い子だったら、多分こんな事もありそうだなと。
手を離した途端、居なくなって、何処かに消えそうな。
それでも、身内以外の誰かに迷惑掛ける真似はしませんし、我儘も言いません。
幼女である事を知っているのは、身内だけです。
傍から見ればきちんと年相応。
あと単純に見掛けの小さい子が、自分より身長の高い子を撫でてる姿が見たかった。そんな話です。