ハンターズギルド
当面困らないだけの知識を身につけたと判断したボクは、城から旅立つ事にした。
明良はまだ城に留まるみたいだけど、もとより一人で旅をするつもりのボクが合わせる必要は無いので、一応声を掛けてからさっさと城をでる。
城を出てまずは、ハンターズギルドに向かう。近場で簡単な依頼をいくつかこなして、長距離の旅支度を整えるのである。
ギルドの扉を開けるとカランカランと云う乾いた音がして、中に居た数名の屈強で暑苦しい男達が一斉にこちらを向いた。
「よう、此処はお嬢ちゃんの来るような所じゃないぜ~」
中でも一等ガラの悪いチンピラ風の男が野次を飛ばして来る。…女の子に間違えられるのは慣れてるので、“お嬢ちゃん“と云う単語にピクリと眉を上げるだけで無言のまま通り過ぎ、受付嬢に声を掛ける。
「ハンターとしての登録をしたいんですけど」
「あ、はい。では、お名前とジョブを教えてください」
「ユウヤ・キサラギ。ジョブは…格闘家かな」
「格闘…拳闘士ですね。…登録しました。こちらが登録証になります。初登録時のランクは一律Eスタートになります。登録証の再発行には実費100ゴルト頂きますので、無くさない様にお気を付けください」
銀製のメダルを貰った。確かにこれなら銀貨1枚はするか。…格闘家は拳闘士になるらしい。使うのは拳だけじゃないけど。
「判りました。すぐに受けられる依頼ってありますか?出来るだけ近場で」
「そうですね、戦闘能力に自信があるのなら討伐系の依頼などでどうでしょう?キサラギさんはランクEなので、・・・こちらの三枚が該当する依頼になります。一番遠い所でも30分程で行けますよ」
「じゃあ、それ全部受けます」
「分かりました。では、よろしくお願いします。それから」
と言って、受付のお姉さんは一冊の小冊子を差し出してきた。
「初登録の人にはこれをお渡ししますね。依頼の受け方や、報酬の貰い方などギルドの基礎が書かれています。それと、この近辺で出没する魔物の情報も載ってますので、参考にして下さい」
なるほど、ギルド初心者虎の巻って所か。
「ありがとうございます」
冊子と依頼書を受け取り、礼を言って受付を離れる。
「おう、譲ちゃん」
声からしてさっきヤジを飛ばしてきたチンピラだろうか。
ガシッ!ギリギリギリ・・・
「だぁ!」
いきなり肩を掴んできたその手を逆に掴み(ガシッ!)、後ろ手に捻りあげる。(ギリギリギリ・・・)
「なんか用?おじさん。目が悪い様だから言っておくけど、ボクは男だから。次に”譲ちゃん”なんて言ったらボク何するか分かんないよ?」
「いっいででで、わ、わかった!お、俺が悪かったから、は、離してくれぇ~」
パッと相手の腕を捻っていた手を離してやる。
「次からは相手の力量を考えてからケンカ売りなよ」
それだけを言ってギルドを後にする。
それにしても何処にでもああ云う輩は居るんだな、これからも気をつけよう。
サブタイトル変更しました。