魔導器選び
謁見の間を後にしたボクらがエルトさんに連れてこられたのは、武器庫っぽい部屋だった。
ここは魔導器の保管庫だそうで、召喚された勇者はこの中から自分の好きな魔導器を選ぶんだそうだ。
「右の方から、刀・剣類、槍等の長物、弓矢等の飛び道具、防具類となっております」
「すごいな・・・、世界的には西洋風なのに日本刀っぽいのもあるなんて」
「明良は刀から選べば?キミの戦闘スタイルに一番合ってると思うし」
「おう。夕はどうするんだ?」
「・・・戦闘用のグローブとか無いのかな。とりあえず、防具の方から見てみる」
と会話を交わしながら、それぞれの目当ての棚に歩み寄る。
「あれ?」
ボクはある一つの物体に気付いた。鎧や兜がそろう中で、一つだけ違うものがあったのだ。
「カバン・・・いや、トランクかな。なんでこれだけ?」
とりあえず開けて見る。
「あ、グローブとレガースだ」
そこに収まっていたのは、赤いグローブと青い脛宛だった。意匠が似通っており、おそらく対の物だろう。
「ねぇ、エルトさん」
「はい?なんでしょう」
「これ、この専用っぽいトランクに収まってたから、二つでワンセットみたいなんだけど。二つとも貰ってもいいのかな?」
「これは・・・」
エルトさんはトランクとグローブとレガースを見比べて
「そのようですな。確かに二つでセットのようです。それになさいますか?」
「うん」
「では、着用してみてください。魔導器には精霊が宿って居りますので、波長があえば話しかけて来るはずです」
「わかった」
エルトさんの言うとおり、グローブとレガースをはめてみる。見た目に少し大きいかな、と思ったが実際に付けてみると、体に合わせて縮んだ。これも魔法か。便利だな。
『聞こえるでありますか、マスター?』『聞こえるっすか?マスター』
うわ、びっくりした。なんか二つの声が同時に聞こえたけど。
『始めまして、自分はアイスレガースに宿る氷竜であります』
『オイラはフレアグローブに宿る炎竜っす』
(これが魔導器に宿る精霊・・・か?)
『いかにも』
『でも、これ扱いは酷くないっすか?せめてこいつ等とか』
(ああ、ゴメン。氷竜と炎竜だね。で、特殊能力ってどうするの?)
『はい。まずマスターには自分達の名前を決めていただきたいのであります』
『いまはまだ仮契約ってことっす。オイラ達に名前を付けて初めて本契約になるっすよ』
(ふーん・・・、じゃあ氷竜の方が氷雨、炎竜が炎牙でどう?)
『氷雨、了解であります』
『炎牙、ね。りょうか~いっす』
『では、能力を覚醒させる為、マスターに接続するであります。すぐ終わるのでしばらく待っていて欲しいであります』
(ん、わかった)
『では』
氷雨と炎牙の気配がボクの中に潜ってゆく。なんか変な感じ。