国王との謁見
結局、その日は疲れもあるだろう、てことで客室に案内してもらった。
真ん中に談話室、所謂リビングみたいなのがあって、その両隣がそれぞれの寝室になっていた。
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次の日、目覚めて着替えた後(この世界の衣装が用意されていた。)談話室で朝食をとっていると、エルトさんがノックと共に入ってきた。
「おはようございます、ユーヤ様、アキラ様」
「「おはようございます」」
「朝食を食べ終わってからになりますが、国王陛下がお二人にお会いしたいとおっしゃっておられますので、謁見の間までご案内致します。」
この言葉にボクは明良と目を合わせた後、エルトさんに向かって言う。
「ボク等はこの世界の作法とか何も知らないんだけど?」
「大丈夫です。お二人が異世界より来られた方であると言う事は皆承知しておりますので」
「ふーん、なら良いけど」
と話をしつつ、朝食を取り終り謁見の間に案内された。
「ユーヤ・キサラギ様、アキラ・フヅキ様ご案内いたしました」
エルトさんの後について謁見の間に入ったボク等を見る人、ひと、ヒト。中央奥にはいかにも「王座」といった感じの豪華な椅子があって、そこにはこれまた「王様」って感じの豪華な衣装を纏った中年の男性が座っていた。
「このエルトザームによく参られた、異世界の方。ワシがこのグレンツェント国の国王、ミハイル4世である」
「はじめまして、アキラ・フヅキです」
「ユウヤ・キサラギです」
「早速ではあるが、この世界の置かれている状況をご存知だろうか?」
国王の問いに明良が答える。
「昨日、エルトさんから大体の事は聞きました。と、言っても魔王が現れたのでそれからこの世界を救って欲しい、と言うだけですけど」
「うむ、ならばここで、詳しい話を聞かせよう。宰相よ」
「はっ!では、話を始めさせていただきます。事の始まりは半年程前でした・・・」
宰相さんの話は長かったので、要約するとこんなかんじ。
それまでも、町から遠く外れた森の中などでは魔物の被害も報告されていたが、半年前を境に街道沿いでの被害報告が相次いだらしい。これは過去に魔王が現れたときの前兆現象として認知されており、今回も魔王が現れたため、魔物たちの数が増え、活動が活発になった物と考えられた。そして、過去の事例に基づいて勇者召喚の儀式を行ってボク等をこの世界に呼び出した、と言うことらしい。
「ご理解いただけたでしょうか?」
「はい」
「うむ、ならばその方等に問おう。勇者として、この世界を救ってくれるか?」
国王のこの問いに対して、明良は一瞬も迷わず了承する。
「はい。皆さんの期待に答えられる様に精一杯頑張ります」
・・・こいつ、「勇者」って言葉に喜んでる。
「ユーヤ殿はいかがか」
こっちに話が来た。
「ガンバリマス」
とりあえず、棒読みで返事をしてみる。「何を」ってのを意図的に云わなかったんだけど、気付くかな?
「うむ!ではエルトよ、勇者殿たちを頼むぞ」
「御意」
あ、気付かなかったかな。それとも気付いててスルーしたか。とりあえずそこで、国王への謁見は終わりで、エルトさんに促されて、謁見の間を後にする。
・・・これから何をするんだろう?めんどくさい事が起こりそうな気がする。