とりあえずの状況把握
・・・そうだ、このあと目が覚めたら目の前にこの仙人みたいな外見の老人がいたんだ。
とりあえずお互いに自己紹介をした後「詳しい説明は場所を移して」と言われて明良と二人、老人(エルトと名乗った。宮廷魔導師の長だそうな)の後に着いて行ったら、応接室っぽい部屋に通されて、そこで色々話を聞いた。
曰く、
ここはボク等にとって異世界であること。
世界の名前はゼルトザームといって、今いるこの国はグレンツェント王国ということ。
今この国は魔王の影に脅かされいること。
その魔王に対抗するためにこのエルトさんが国王の命を受け、ボク等をこの世界に召喚したこと等。
そして、話は冒頭に戻るわけだ。
・・・・・・・・・・・
いい加減現実逃避をしてばかりは居られない。
とりあえず考えもなしに了承しやがった明良の頭を軽く叩いてから、エルトさんに話しかける。
(横で明良が文句を言いたそうにしてるけど、無視する)
「とりあえず、その前に質問があるんだけど?」
「はい、なんなりと」
「ボク等が居た世界は魔物とか居なくて、住んでた国ではここ60年くらい戦争すらなかった平和なとこなんだ。いきなりそんなこと言われても戦うのなんてムリだと思うんだけど」
「それならば、問題はありませぬ。異世界から召喚された者には、特殊な能力が備わります。もちろんその力を覚醒させる方法もございます」
「特殊な能力って?」
「まず、身体能力及び魔力の強化、これはどの方にも共通して備わるものです。それに加え、個人ごとに異なる能力を魔道器のサポートによって呼び覚まします。この特殊能力は正に千差万別とも言われ二つとして同じ能力は無いとされております。まあ、例を申せば動物と会話する能力や精霊との対話を可能にする能力などですな。」
「つまり特殊能力は補助的なものってこと?」
「いかにも」
「千差万別って言うからには他にも異世界からの召喚者っているの?」
「はい。今までに15人の方が召喚されております」
「その人たちって、どんな理由で召喚されたの?」
「異世界より勇者を召喚するのは、魔王が現れたときのみにございます」
「勇者・・・ね。じゃあ最後に。・・・ボク等を元居た世界に戻す方法は?」
この質問をしたとたんこれまで澱みなく応えていたエルトさんが言葉に詰まる。
「もしかして無い、とか?」
「・・・はい」
・・・うわぁ。
「ねぇ、明良」
「なんだ、夕」
明良にニッコリと笑顔を向けつつ、
「とりあえず、一発全力で殴るから」
と宣言をすると、ざぁぁっと顔を青ざめさせて、あわててボクから距離を置く。
「な、なんで!?」
「キミがあの黒いのに手さえ触れなければ、いや、触れれてもボクの腕さえ掴んでなければボクは巻き込まれずに済んだから」
「理不尽!?」
「問答無用!」
ドコォ!
・・・ふ、あの程度の距離はボクにとって一瞬で詰められる程度でしかないんだよね。残念。