SS 地上の星
『まま』
白き竜が絵本を持ってやってきた。手紙に興味が出てきたと思えば、最近は絵本や文字にも興味を示していた。
「なぁに? 今日はこれがいいの?」
『きゅ!』
今日の絵本は流れ星に願いを叶えてもらえる物語だった。私の膝の上で、嬉しそうにそれでいて興味津々で絵本を聞いていた。
『きゅきゅきゅ!』
絵本を読み終われば、ソワソワとして窓辺から空を見上げている。
「もしかして、流れ星が見たいの?」
『きゅきゅう!』
「まだ、夜じゃないから見えないですよ」
『きゅう』
流れ星どころか、星が見えなくて、白き竜が落ち込む。その時、フリード様が仕事から戻ってきた。
「リューディア。お茶でもどうだ?」
「フリード様」
フリード様に駆け寄ると、白き竜を見て「どうしたんだ?」と聞いてくる。
「それが流れ星が見たいそうで……今夜にでも、ちょっと夜更かししますね」
「では、一緒にバルコニーで見よう。お茶や菓子も準備するのはどうだ? 三人で星を見るのはどうだ?」
『きゅう!!』
白き竜が、嬉しそうにフリード様の頭にしがみつく。
「まぁ、よかったわね。そうだわ。私も少し準備していいですか?」
「準備?」
「はい。厨房に少しだけお邪魔してもいいでしょうか?」
「それはかまわないが……」
「じゃあ、夜を楽しみにしてください」
『きゅう』
そうして、さっそく夜の星を見る準備を始めた。
『きゅう』
「もうすぐでリューディアがくるから、少し待ちなさい」
リューディアがいなくて、寂しそうに星を見ている白き竜が、ムムッと眉間にシワを寄せて空を見上げている。
『きゅきゅう!』
「……だめ。空の星にはいくら飛んでも届かないぞ。迷子になったら、どうする? 絶対に飛んでいくなよ」
白き竜が、空を指差して星を取りに行こうと言うが、絶対に取りに行けない。白き竜は、子供のように『きゅきゅ!』と怒ってしまっている。
「流れ星は、いつ流れてくるかわからないからな。そう怒るな」
『きゅうぅぅーー』
落ち込んだ白き竜を子供のように抱っこして、背中をさすった。
「お待たせしました」
『きゅ?』
「遅くなってごめんなさい。たくさん準備していて……」
持ってきたトレイをテーブルに置くと、白き竜が目を輝かせた。執事のハンスたちも順番に飲み物やお菓子を並べていく。
「これは……?」
「ぜっかく星を見るので、星の形に野菜をくり抜いたんです。こちらは、星型のクッキーを料理人さんに教えてもらいながら作ってみまして……ゼリーも星型にしてくださいました。ソーダと合うと言うので、入れてもみました」
星をモチーフにしたお菓子や、飲み物。白き竜用の野菜や果物も並べ終わると、ハンスたちが、「失礼します」といって下がった。
『きゅ! きゅ!』
「はい。食べても大丈夫ですよ。ちゃんと座って食べましょうね」
そう言って、白き竜用の子供椅子へと促した。ちょこんと座った白き竜は、お利口に座る。
「機嫌は直ったな……ほら、流れ星は見えなかったが、地上の星だぞ」
『きゅう!』
嬉しそうに木の実や果物をかじる白き竜を見て、微笑ましくなる。
「フリード様もどうぞ」
ゼリーの入ったソーダのグラスを渡すと、フリード様が優しい眼差しで受け取った。
「星を見ることを提案して正解だったな。リューディア、感謝する」
「私のほうこそ……フリード様やこの子にいろいろ準備しようと思うと楽しくなって……遅くなりましたね」
「気にしない。嬉しいよ」
そう言って、フリード様が抱き寄せてくる。それに気づいた白き竜が、二人の間に入り込んできた。
思わず、くすりと笑みが零れた。
そうして、流れ星のない夜空を楽しんだ。




