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レイラ視点

「ラウル様! リューディアを竜聖女に戻すわよ! こんな雑用はあの娘がお似合いよ! 私のすることじゃないわ!! これ以上耐えられない!!」

「バカなことを言うな。どうやって竜聖女に戻す気だ? リューディアの竜輝石の光が消えたのは、いまだに原因がわからないんだぞ?」

「だったら私の竜輝石の光を消せばいいでしょう!? とにかくリューディアを竜聖女に戻さないと……こんな雑用はまっぴらよ! お金だって、手に入らないなんて……!」


 ラウル様は、考え込んでいる。リューディアの竜輝石の光のことは、私たちは関与していることではない。でも、私の竜輝石は違う。リューディアの竜輝石の光がなくなったことをいいことに、ラウル様の手引きで竜機関にある竜輝石に細工をして私が竜聖女に選ばれるようにしたのだ。


 リューディアの竜輝石の光が消えなければ、こんな計画は思い浮かばなかった。


 エディク王子の婚約者は竜聖女と決まっている。リューディアが婚約破棄されて、次の竜聖女がいなければ、貴族の娘から選ばれるだろうけど、それでは確実に私が婚約者になれるわけでは無い。確実に婚約者になるには竜聖女になることだった……それなのにっ!!


「リューディアの竜輝石がどうして光り、それが失われたのかはグラムヴィント様しかわからない。あのリューディアの竜輝石は、他の竜輝石と違い特別と言われているし、私たち人間がむやみに手を加えることは出来ないんだよ」

「だから、私の竜輝石は別のものを光らせたんでしょう!? それを同じように細工してよ!!」

「……竜機関も、今はちょっと不味い。エディクが連日何度も様子を見に来ているし、すり替えた竜輝石を調べている可能性もある。……だから、レイラに竜聖女としての威厳を見せつけたかったのに……まさか、エディクが見張りにつくほど、竜聖女としての務めができていないとは……今、竜機関で小細工なんかしてみろ。すぐに私たちがグルだとバレるぞ」


 リューディアが竜聖女だとわかる光を放っていた竜輝石は、竜機関にある一番大きなもので、一番古い物だと言われていたらしい。でも、いつも竜聖女が現れる時にそのリューディアと同じ竜輝石が光っていたとは記録に残っていない。つまり、竜聖女を示す竜輝石がそれだとは限らないのだ。それどころか、他の竜輝石が光ったこともあると古い記録が残っている。

 

 ラウル様は、妾の御子とは言え王子だから、竜機関に在籍している。その記録をラウル様が確認しているのだから間違いはない。


「私は、リューディアが幸せになるために竜聖女になったんじゃないわ!」


 婚約者は、私を気にしない。お金もない。私が毎日やっていることは、貴族とは思えないほどの雑用。

 動きもしない巨大な竜の世話なんて、私がすることじゃない!


「……ウォルシュ伯爵家にお金がないならラウル様が、竜機関で私の給金を上げてよ! リューディア以上に私が貰ったって誰もなにも言わないわよ!」

「だから、竜機関は今は無理だ。エディクがすべてを確認している。とても、一人でしているとは思えない。それなのに、竜機関の誰がエディクに手を貸しているかわからないんだよ。そんな状況で、裏工作なんかできるわけがないだろう。……レイラ。私たちの状況も不味いんだぞ。もしバレてみろ。エディクは粛々と私たちを捕らえるぞ。だから、せめてグラムヴィント様の世話を竜聖女らしくもっとやらないと……」

「お金を作るか、私の竜輝石の光を消して欲しいわ……こんなこともうイヤよ! 耐えられないわ!」


 持っていたモップを地面に叩きつけて、怒りを露わにする。ラウル様は少し考え込んだあとに、とんでもないことは言い始めた。


「金だけなら、なんとかなると思うが……」

「給金を上げてくれるの!?」

「竜機関のことは、私には動かせない。でも、金ならグラムヴィント様の鱗でも売れば、莫大な金額になるはずだ。竜の鱗は、薬にもなるから売買されているし……それがこの国の偉大な黒緋竜グラムヴィント様の鱗なら、誰もが欲しがるはずだ」

「グラムヴィント様の鱗なんか売ったら私がエディク王子になんと言われるか……バカなの!?」

「バカはレイラだ。そのまま、売るわけがないだろう。裏のルートに売るんだよ。闇取引だ。それなら誰にもバレない」


 この鱗一枚で、莫大なお金になる。

 ラウル様の言う通りだ。竜の一部は高値で取引されている。それがグラムヴィント様のものなら……。


 すぐにリューディアを竜聖女に戻せないなら、とにかくお金を作ってその間に考えればいいこと。いくら、いずれ私が王妃になるとしても、その間に破産すればエディク王子の小言が増えるのは間違いない。

 それに、ドレス一枚買えないなんて、私には耐えられない!


「……売ってきてやるから、私との約束は守れよ」


 ラウル様との約束は、エディク王子の次は彼を王太子にすること。陛下は兄弟もおらず、エディク王子にはラウル様だけが兄弟。エディク王子が御子を持たなければ、ラウル様を王太子に進言しやすい。それどころか、必ず次の王太子にと声が上がるはず。


 だから、私が王妃になっても懐妊しなければいいのだ。そのためにエディク王子との御子を作らないとラウル様と約束をして、彼は私を竜聖女にする手引きをした。


「王妃にはなりたいけど、もうあんな変な王子と結婚なんかしたくないんだけど……」

「お・ま・え・がエディクと結婚したいと言ったんだろう! 嫌なら、結婚した後にエディクに毒でも盛ればいい。寝所なら盛りやすいだろう」


 呆れたようにラウル様がそう言う。

 エディク王子は堅物で、だれも寝所に召さない。忙しいからかもしれないけど……寝所に入られるのは、きっとエディク王子の将来の妃だけだ。ラウル様はそのことを言っているのだ。


 リューディアの竜輝石が消えたのは、私たちにすれば私が竜聖女になる絶好の機会だった。でも、私たちが消したわけでは無いからリューディアを竜聖女に戻す方法はわからない。

 でも、リューディアがみんなの憧れの的になるなんて絶対にイヤ。


「鱗一枚で大丈夫? 二枚ぐらい必要かしら?」

「とりあえず一枚でいいだろう。エディクが戻ってくる前にさっさと取ろう。あいつに見つかるとうるさいからな」


 グラムヴィント様の鱗を取る決意をして、持っていたモップを鱗に当てた。とてもじゃないが、モップでは取れない。


「そう簡単には取れないか……剣なら刺さるか? グラムヴィント様を傷つけないようにしないと……寝ていて好都合だったな」


 そして、ラウル様が剣を抜き出して、グラムヴィント様の鱗を取ろうと刺した。血の一滴も出ないから、上手く取れるとお互いに喜んだ……そして、私とラウル様は背筋が凍った。


 あの冬眠中で、なにをしても起きないグラムヴィント様が恐ろしい眼光で目を見開いて私たちを見ていたのだ。









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