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黒緋竜グラムヴィント

 竜の国エルヴァスティ。

この国には、黒緋竜グラムヴィントという竜がおり、その竜がいる限り国は栄えるという伝承があった。


その黒緋竜グラムヴィントは王都の城の一角にいる。遥か昔に、この黒緋竜グラムヴィントがここにおわす取り決めがなされているらしい。


エルヴァスティ国には城が二つあり、城と城の間にグラムヴィント様の巨大な籠があるような造りだった。


一の城と呼ばれるところには陛下がおり、二の城と呼ばれるところに王太子のエディク王子がいる。グラムヴィント様の管理もエディク王子の管理だった。だから、黒緋竜グラムヴィント様も、二の城に住んでいるということ。


黒緋竜グラムヴィント様の本当の名前はわからない。誰も竜の言葉がわからないからだ。

遥か昔に、グラムヴィント様が誰かに付けてもらったこの名前が気に入って、昔からそう呼ばれているらしい。


そして、黒緋竜グラムヴィントをお慰めするのは、竜聖女と呼ばれる選ばれた女性。

 現在の竜聖女は、私、リューディア・ウォルシュだった。


 お慰めと言っても、することはグラムヴィント様のお世話だ。鱗の身体を拭き、お食事をお持ちする。そして、グラムヴィント様がお話したいときにお話をすること。


 鱗の身体を拭くと言っても、綺麗になりすぎるのは嫌がるし、お食事も魔物を食べるときもあれば、何も食べない時もある。グラムヴィント様のさじ加減は難しかった。

 でも、今ではグラムヴィント様の好みはそれなりにわかる。


 今日もグラムヴィント様のもとへと行く。といっても、私は竜聖女だから、いつもグラムヴィント様の側の部屋に住んでいる。グラムヴィント様に呼ばれれば、いついかなる時も側にいないといけないからだ。


 グラムヴィント様のおわす部屋は、錬金術で作られたドーム型の巨大な鳥かごだ。グラムヴィント様が、逃げられないようにこのようなところに住まわせているのだ。巨大な籠の檻の周りは、緑に囲まれている。緑溢れる草花に、いつからあるのか、苔むした大岩まである。巨大な籠の檻の中には、これまたいつからあるのかわからない大樹まであり、それが日陰となり、一日中日光に晒されることはない。

 その鳥かごの中に私はいつもグラムヴィント様と一緒にいる。竜聖女がいつも一緒にいるのは、この偉大な竜に逃げられないためだった。


『リューディア……どうした?』

「なんでもありません……グラムヴィント様、そろそろ魔物の肉でも取りに行きましょうか?」

『今は要らぬよ……そろそろ眠りに入る時期だ。私はしばらく眠る』


 ぼんやりとしている私にグラムヴィント様は、優しくすり寄ってくるように頬を私に寄せる。

 グラムヴィント様のいう眠りに入る時期とは、冬眠みたいなもの。いつもの睡眠とは違い、一度冬眠に入ると一年以上起きない時もあった。

 今回はいつまで眠るのか……そう思うと寂しい。


「そうですか……でも、眠っていてもいつもみたいに毎日一緒にいますからね」

『好きにせい……遊んできてもかまわぬぞ。そろそろ、リューディアも婚期なのではないのか?』

「……私がいるところは、グラムヴィント様のところだけですから……気にしないでくださいね。それに、私みたいな令嬢は誰も欲しがりませんよ」


 そう言うと、グラムヴィント様はそっと細い目を閉じる。その竜に私はもたれ、持って来ていた本を広げた。グラムヴィント様は、その私を尻尾で包むようにしてくれ、一時の休みについた。









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