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平凡な僕の性〜片目魔眼の少年〜  作者: ナカヤマ ツバサ
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なんでこうなった?

初投稿作品。

 海上都市アクシアシティと、言うなの埋め立て地にあるとある中学校。


 私立翠鳳(すいほう)中学校。


 僕はその中学校の生徒だ。


 勉強、学業、運動、何にでもとにかく励んでいる極々普通の中学生。

 

 学力は中の下、運動神経抜群で成績普通の中学生。


 ちなみに友達は二人だけ。それもアホトリオなんて呼ばれてはいるが、それなりに日々を謳歌しているつもりだ。


 でもやはりアホトリオなんて呼ばれているだけあって、周りから見た自分は浮いた人間らしい。


 不気味、真顔、心が無い、無愛想、気力が無い、地味、時々うるさい。

 

 酷い言われようだが、あくまでも他人の意見なので気には止めてはいないつもりでいる。


 てか最後の僕に対する印象、シンプルにただの悪口だと思うのですが……。


 とまあ見た目も中身もぱっとしない僕っ子こと月原浩二は今現在、学校から帰ってきて自部屋にいるはずなんですが………。

 

 「おかえりなさい、そしてようこそ。我が部屋へ」


 誰だこいつ。


 見た目はどう見ても若い女性、それも特大の美女だ。


 美女と決めつけるに等しいその腰まで届いている長い髪は、コスモスの様に綺麗なピンク色をしていて、ひらりまたひらりと揺れていて、いい匂いがする。ハーブだろうか、とてもいい香水の匂いが僕がいる出入り口まで届いて僕の鼻に刺激が走った。


 それに只者とは思わせない全身真っ黒の白衣には、袖や裾などに赤色の刺繍糸で器用に模様が縫い目されていて、胸元からはご立派で豊満な谷間が見える。

 それに先端部分がちょびっと曲がった、とんがり帽子。


 間違いない。


 おそらく魔女だな。


 だが魔女など見覚えの無い次元通り越していて頭が痛くなる。


 赤の他人ならぬ赤の美人は、ドアに浩二と書かれた看板を掛けてある部屋で堂々と、魔王が座っていそうなごつい黒椅子に足を組みながら座っていた。


 それに自分の部屋であるはずの個室が、何故か全く別の部屋に変わっていた事に気づいた。

 

 漆黒(しっこく)

 

 そんな言葉がお似合いの部屋だった。


 部屋は薄暗く、天井は見ただけでも4メートル、広さは大体正方形の6畳と言ったところ。


 はっきりと見えなかったが大量の本、それも図書館にあるような本ではなく表紙に紋章が描かれている本、全く見た事がない文字でぎっしり表紙が埋まっている本、しかもそれらの本はすべて、普通の本よりかなり厚い。


そんな魔術本の様な物が、無造作に積まれて置かれていたり、2メートルはある本棚にギュウギュウに敷き詰められている。


 特徴的な所は全くなかった僕の部屋に比べたら、個性もインパクトも桁外れで圧倒されそうになった。


 それに部屋が薄暗くて気づかなかったが、魔女の座っている椅子から1メートル横に離れて人影が見える。人影と言っても肩幅が、ばかでかくて肌色は黒く、そこらにいるボディービルダーなんか顔負けのつやつやした筋肉が見えた。


 だがどう見たってこれは銅像だった。


 そう、これは銅像だ。


 じゃなきゃありえないのだ。


 上半身裸でお腹に手を当てながら、執事姿で鼻水を垂らし、泣きじゃくる丸坊主の黒サングラスを掛けた全身黒マッチョなんてこの世にいるはずないんだから……!


 「う………ゔゔ……ズッ!」

 うわ……今、鼻すすったよな…。

 すると魔女(仮)が、異世界風の黒椅子を押しのけて泣きじゃくる黒マッチョに近づいてきた。


 「おだまり!」


 その掛け声とともに黒マッチョの綺麗に割れている腹筋に、ハイヒールが突き刺さる。


 僕はその光景を見て、逆の意味で恐怖で足がすくんで動けなくなっていた。


 一体この人たちは何なのか、一体この状況は何なのか。


 それがなんとなく分かるようになるのは、約2日前に遡るのであった。――

 


 ****



 暖かな春の日差しが、昼休み中の中学校の教室を照らしていた。


 落ち着く。


 何事にも囚われない太陽、ツンデレの様に冷たく涼しい春風、ゆっくりと舞い落ちてくる桜。


 ……天国だ。


 僕は今絶賛、春の暖かな日差しと強く吹きつける春風に、心も身も任せて春を堪能しながらスヤスヤと睡眠をとっているのであった。


 はぁー、マジで最高。やっぱり春が一番昼寝に向いてる季節だわぁ。やっぱ夏が青春の季節、秋が食欲の季節、冬がリア充の季節なら春は昼寝の季節ってかー。がっはっはっはっはっはっはっは……。(寝言)


 「おらー!」

 「やっちまえ。タケシ!」


 その怒鳴り声は、教室中心を起点にして教室全体を響かせながら、僕の耳に直撃した。


 うるさい。目障りだな。


 僕は厄介払いをするときの面倒くさそうな目で、騒がしい所に目を向ける。だがこんなチラ見しなくても、どんな奴らなのかはすぐに検討が付いていた。


 陽キャ軍団。


 ド、陰キャの僕とは真反対の存在で、クラスの中心人物たちだ。

 正直言ってめちゃくちゃ目障りで、…うざい。


 だが、そんな陽キャ軍団の歓声から何故か見に覚えがある声がしたので確認ついでに見てやろうか………………。


 「……てっ、なんだこれ⁉てかなんでキネが椅子取りゲームしてるんだよっ!」


 そこには椅子や机をどかして教室の半分を犠牲にしながらも作り上げたフィールドに、陽キャ軍団に囲まれながら椅子取りゲームをしているキネの姿があった。


 キネの本名は、墓羽 杵(はかばね きね)。学校一の美男子で、他校の女子生徒からも告白を受けるほどのモテ男である。一際目立つ金髪は、彼のチャームポイントであり、紳士的な性格の持ち主。ちなみに僕の親友で、アホトリオのメンバーの一人。

 そんな完璧美男子だが彼には、これは流石に……、と言える性格があり、その性格のせいでアホトリオナンバー2なんて呼ばれている。 


 そしてそんな完璧美男子だけど難点があるキネが今現在、ウォーミングアップだろうか、反復横跳びをしていて汗を流し、汗を生んでいた。


 僕は強烈なツッコミを喰らわしたせいか、一気に眠気が覚めて勢いよく立ち上がった。


 すると僕が椅子を引くときに出した音で気づいたのか、キネがこちらに向かって手を振り始めた。


 「おうコウジ、お前もやるか楽しいぞ」

 「バカいえ、やるわけがないだろ」

 「ちぇっ、のりわりー」

 「悪くて結構。てか罰ゲームの件を……って」

 

 すると最近、話題沸騰中のアイドルグループの曲が流れるやいなや、キネ達を囲んでいた用キャ軍団が一斉に手拍子をし始めた。


 それに応えるかのようにキネが微笑み、何か嬉しそうに頬を赤らめた。

 

 「さぁ、お楽しみはこれからだ!」



 ****


 

 「で、なーんーであんな奴らと椅子取りゲームしてんだ……よっ!」


 僕はキネのおでこに、目一杯力を入れてデコピンをくらわした。


 「いでっ!しょうがないじゃないか、誘われたんだから。しかもあの椅子取り名人のタケシさんからだぞ。そうそう無いんだぞ、こんな機会は!」


 椅子取り名………、誰だそれ?てかなんで僕が逆ギレされてんだよ。何?僕が悪いのか。椅子取りなんちゃらを知らない僕が悪いのか?


 いくら考えても何が何なのか分からず、はぁぁ…と、ため息を一息ついた。


 「まぁでもー、さぁ、お楽しみはこれからだ!、とかスポーツ漫画の主人公みたいなことぬかしておいて開始早々顔面からずっこけるなんてマジで笑ったわ。ぷっ」

 「お願いだ。やめてくれ、聞きたくない」

 

 するとキネは両耳を両手で強く押さえ付けて、顔をトマトのように真っ赤に染め始めた。

 だが僕は遠慮なんて知らないクズキャラの如く、強く声を張り上げる為に息を大きく吸い上げた。


 「でーもーさー、その後のキネ、恥ずかしさのあまりずっこけた体制のまま固まって顔をうごめるなーんてな。しかもそれで負けるとか………、きゃはははははははははっ!」

 「言うな言うな言うな言うな⁉、そして笑うな!!」

 「まぁ、お前に対する日頃の恨みはこれくらいにして本題に入ろうか」


 キネがわかりやすく、ごくりと息を飲み込み、正座になる。


 「それで、なんで椅子取りなんちゃらに誘われたからってジュース買ってくるの事を忘れて、椅子取りゲームしてたんだ?」

 「……あっ」

 「あっ、ってなんだよ。………一応聞くがキネ、もしかしてじゃんけんで負けたほうが罰ゲームでジュースを買いに行くこと忘れてたりしないよな?」


 僕はおどおどするキネを睨みつけながら、疑いの口で問いかけた。


 「…………てへペロっ」

 「ぺッ!」

 

 僕は追い打ちをかけるように、ふざけたキネの顔に唾をかけた。

 

 「あのー浩二さんや。俺の気のせいなら良いですけど、今唾かけました?」

 「はい、唾かけましたけどそれが何か?」


 するとキネがあの手この手で誤魔化そうとしてふざけていた顔から、スラリとまともなマジ顔に変わっていった。


 「悪いが俺にはドMの素質はないんだよ。でもな浩二」

 「ん、何だ?言い訳は聞かんぞ」

 「………そんな事をされたら興奮して、勃っt!…ぐはっ‼」


 キネに強めの右アッパーが入った。


 白目を向きながら少し浮いた身体が垂直に落ちてきて、ガクッと膝が曲がり、倒れ込んでジタバタ暴れだした。

 どうやら舌を噛んだらしい。


 「次!公衆の面前で下ネタ発言したら、護身術の拷問フルコースをおみまいしてあげるからな。わかったら返事!」

 「ばび!」


 キネは返事をするやいなや、すたこらさっさと教室から出ていった。

良ければ感想、改善点などがある場合は教えてくださると嬉しいです。

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