メンタルドーピング罪
転移したり転生したりVRMMOにダイブしたり、色々なカタチで新しい自分になっていくわけじゃないですか。そこで便利なアイテムが使用する、唯一無二の能力を授かる、チート行為を行う。なるほど分かりました。しかしです。そこで、勇敢になったり、決して折れない心を持つって、どういうことなんでしょうか?最強の武器を手に入れてハイになってしまっているとか、絶対者になることで万能感を得るとかは敵であったりライバルがやることですよね?では主人公はどうメンタルを鍛えたのでしょう?
『無職転生~異世界行ったら本気だす~』
なろう転生モノの金字塔です。本気を出すそうです。転生した際に、これまでの34年間のダメダメな人生を後悔して0歳から、人生に本気で取り組むぞ!と・・・。これが私にはわからない。まるで理解できない。両親が死んでも葬式をさぼって遊んでいた人間です。彼が初めて本気を出そうとした時、その心の入れ替えが成功するとはとても思えない。だってそうじゃないですか、まだ彼が現世にいたときのモノローグ読めば、まともに受けちゃいられないです。
戻りたい。
出来れば最高だった小学か、中学時代に。
いや、一年でも二年でもいい。
ちょっとでも時間があれば、俺には何かができたはずなんだ。
どれも中途半端でやめたから、どれも途中から始められる。
本気を出せば、一番にはなれなくても、プロにはなれたかもしれない。
34歳無職の頭の中としては100点みたいな出来です。しかし、のちに転生して「本気」をだして成功する素体かどうかといえば、そんなわけないでしょ。『無職転生』は極端な例かもしれませんが、転移、転生後にメンタルに都合の良い変化が起こるキャラクターは多いです。もっとステップを踏まなきゃ読み手はポカンですよ。メンタルドーピング罪です。逮捕です。
ここで、経営コンサルタント大前研一の何十冊も出している本の中で最も有名な言葉を引用します。
人間が変わる方法は3つしかない。
1番目は時間配分を変える。
2番目は住む場所を変える。
3番目はつきあう人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。
最も無意味なのは「決意を新たにする」ことだ。
ある程度の歳をとれば、この文章が間違ってはいないこと、そしてそれが現実的には実行不可能なことが分かります。
転移、転生、ダイブはこの1、2,3を全て変えてくれます。当然人生は変わるのです。チートたる存在にもなれるかもしれません。しかしメンタルを変えるにはやはり、時間が必要です。人生が変わっても「決意を新たにする」ことの無意味さは変化することがないのです。