第83話 二人のパパ.二人のパパと二人のママ
その日の夜
リモート中
英士.涼也.るな「風歌 《ふう》ちゃん退院おめでとう!」
風歌「ありがとう……」
『退院おめでとう会』を『リモート』でしようね。って話しは出てたんだけどね
取り敢えず難題にメドが着いたから、開催したわけです
英士「風歌ちゃん? 何かあった?」
なんかね、悲しい? と惑い? 微妙な表情してんの……風歌ちゃん
画面越しだとね……中々さ……何を思ってるんだろう? って察してあげる事が出来なくて
もどかしいよね……
るな「涼くん、私とふうちゃんね。わざわざ自分の部屋に分かれて『リモート退院おめでとう会』に参加してるの。おかしいよね?」
涼也「マジ? (笑)」
俺はるなちゃんさすがだね! って思ったんだ
ふうちゃんの様子を見て、突拍子も無い事を言ったんだって
涼也「俺なんて気分出してさ。ウイスキーなんて用意しちゃったよ」
るな「うふふ」
英士「なんか……一緒とか微妙な気分なんだけど…… オイラもウイスキー 用意しちゃったよ」
風歌.るな「アハハ」
そう言うと、笑ってくれた風歌ちゃんとるなちゃん
風歌「ごめんなさい 。折角、会を開いてくれたのに微妙な感じにしちゃって……あのね……パパにね、生みの親に……母親に逢ってみないか? って言われたの」
英士「うん……」
そっか…… 俺と御厨くんは、今回の件があって
風歌ちゃんの母親が誰か知ったけど……
風歌ちゃんは知らないんだもんね……
風歌「中学の時にね、ママが話してくれて。さっきもパパがその時の事を説明してくれて…… 漠然と『いつか逢いたいな』って思ってた人に逢えるんだ……っていう期待と。けど逢いたく無い……って思いが交差して凄く複雑な気分になっちゃったの」
涼也「分かるよ……ふうちゃん」
ふうちゃんは、おばちゃんの事を思ってそう思ったんじゃないか……って
英士「月乃さん……ママが好きなんだもん。悩むよね」
るな「私も心の中にいるパパが大好きなの。けど、倫叔父さんがパパだったら……って思ったりしてた」
涼也「うん……」
るなちゃん……
風歌「私には大好きなママがいるのに……心の中にもママがいるの」
風歌ちゃん……
るな「パパにね『守ってやる』『パパって呼んでくれ』って言われて嬉しくて。呼び捨てで呼んでくれるのが幸せで……ふうちゃんが、パパが私を呼び捨てするのは『私とるなちゃんは姉妹だもん』当たり前でしょ? ってニュアンスで言ってくれた時にね嬉しかった……」
涼也.英士「うん……」
風歌「私も中学卒業の時に、生みの母親の話を聞いた時、私にはママだけだもん……パパは亡くなったるなちゃんのパパだけって……同時にるなちゃんのママをママって呼んでいいの? って分からなくなって……高校の一年間はどう二人と接すれば良いか。って悩んだの……」
英士.涼也「うん……」
るな「その時にね『私にはパパが二人いて、ふうちゃんにはパパとママが二人ずついるなんて! 凄いと思わない?』ってふと思ったの」
風歌「今日の朝、るなちゃんがそう言ってくれて……『そうか……私にはパパが二人。ママも二人いるんだ』って思ったらね。どこか割り切れ無くて心の中に刺さっていた棘が抜けて……なんて幸せなんだろうって……」
英士.涼也 《……》
英士「さすがっすね。るなちゃん。そんな風に思えるなんて……そんな言葉をパパさんが聞いたら」
涼也「ふうちゃんもさすがっすね。パパさん、ママさんは大号泣するでしょうね……」
そして
るなちゃんのパパの仁さん……
風歌ちゃんのママの風音さん……
喜んで下さるよね……
風歌「でも……少し不安だな……」
うん。でも風歌ちゃん
大丈夫だよ……
少し……驚くだろうけどね……
よろしくお願いします