第64話 動き出したお年寄り達②
それにしても
俺は人から良く
『人との距離の詰め方が上手いよね』
って言われる事が多いんだけどさ
どちらかっていうと
気難しい吉井さんが(ごめんなさい吉井さん)
凄い山乃さんとは
打ち解けてんなぁって
感じてんだよね
英士「昨日御厨くん休みだったじゃん。俺は違う職員さんに付いて実習してた訳ですよ。その時にね、 吉井さんやお年寄り達にお話を伺うにも、自分の素性を明かさないで……なんてあり得ないって思ったし。 目的を 伝えた上で本気でぶつからなきゃさ、思いは伝えては下さらないって思ったんだよ」
吉井「これ、か、らの……こと……も、き、いた」
すげぇな山乃さん……色々動いて……
俺は? 何をしたんだろう?
涼也「うっ」
泣きたくなんかないのに
勝手に涙が溢れそうになって来て
吉井「どした?」
涼也「吉井さん…… 俺 ……何してきたんでしょうね? ふうちゃんを命の危険に晒して、るなちゃんを病気になるまで追い詰めて…… 助けてあげられなかった」
吉井「ち、がう! りょうく、んが、ふうちゃ、ん、るなち、ゃんを、ま、もって、わしら、の、こと、もまもっ、てく……れた、から、た、たか、う……こと、に、したん、だ」
涼也「吉井さん……」
英士「 間違いなく、施設側に負ける事なく風歌ちゃんとるなちゃん。入居者さん達を守って施設側を話し合いのテーブルに着かせたのは御厨くん。キミだよ? 吉井さんは御厨くんの事を『 女の子を命懸けで守る男の中の男だ』って褒めてたんだよ。ですよね? 吉井さん? 」
吉井「ああ……が、んば、ったな」
英士side
『頑張ったな 』
これほどの褒め言葉はないよね
嬉し涙かな?
ちょっと涙ぐんでいる御厨くん
御厨くんは風歌ちゃんとるなちゃんが
勤め始める1年前から働いて
2年間も
この摩訶不思議な
施設の職員達と戦ってきたんだもん
良く頑張ったよね
涼也「吉井さん負けませんよね」
吉井「ま、けな……い」
英士「皆で勝ちましょう」
オイラ達
誓いを新たにした時にさ
吉井さんが……
よろしくお願いします