異世界での始まり
初めまして。
精霊物の小説を書きたい思い始めたのがきっかけです。
皆さんに面白いと思ってもらえたら嬉しいです。
プロローグ
スイーレンに向かっていた白い軌跡はそのままスイーレン国内の右下の森林に落ちた。
落ちた場所には一人の人間が仰向けに倒れていた。
どこか分からない場所でまずは周りを見渡した。だが、辺り一面見渡した所で目に映るのは自分よりはるかに高い木が生い茂っているだけだった。
「どこだよここ」
言葉を発したのは、日本の高校生小田修司だった。だが、その声も1人しかいない空間では誰からの返事はなかった。
「・・・あの女神、俺が使えないからってこんなよく分からない所に移動させやがったな。とにかくどこか人がいる場所を探さないと」
修司はまず誰か他に人がいないか周りを探すことにした。
30分程歩いたが、景色は変わらず木々が生い茂るだけで、たまに隙間からみえる太陽しか見えるものがなかった。
「どれだけ広いんだよここ。一回適当な木に登ってみるか?」
そういって修司は近くにあった木を見上げたが、推定10m以上ある木を登り切れる自信はなかった、
修司自身こんな場所に飛ばされた理由は分かっているが、それでも理不尽な思いが大半を占めており、残りはもう会えるか分からない親友達の心配だった。
「あいつは確かにクソ女神だけど、能力が使えるなら俺みたいなことはしないだろうし大丈夫だといいけど・・・」
そしてそこから更に30分程歩いていると、修司は前の方に何かの気配を感じた。
「もしかして誰か人がいるのか?」
修司はやっと人に会うことが出来ると安堵して、早走りして気配がする方に向かった。
「グルル・・・」
「え?」
だがそこにいたのは黒い毛を逆立ててこちらを睨んでいる狼のような獣達だった。
獣達は修司を威嚇しながら徐々に近寄って来ている。まるで自分達の獲物を見つけた様だった。
(まずい、こっちは丸腰でまだ何も使えない。逃げるにしても明らかにあいつらの方が速い)
修司は自分が狼達に対抗する手段が無いことを冷静に分析していたが、その結果逃げることすら出来ないことに気付いた。
(どうする・・・下手に刺激すると襲いかかってくるし、かといってこのままいてもいずれは襲われる。)
修司は考えながら少しずつじりじりと後ろに下がっていたが、狼達はそれに気づいた。
「グア!」
そしてとうとう一匹が跳びかかってきた。
「っ!!」
元々の距離が離れていたのもあり、修司はどうにか避けることが出来た。
だが、一匹に近くに寄られた挙句もう一匹と挟み撃ちにされてしまった。
「クソ!」
修司は挟み撃ちにされたと見るや二匹がいない方に走った。
異世界召喚者として身体能力が強化されているとは言え、野生の狼達を振り切れる程では無く、直ぐに追いつかれ横から跳びかかってきた。
修司は前に転がりながら避けた。
起き上がり、走ろうとしたがその時右足に痛みが走った。
「っぐ!?」
痛さで倒れ、足を見ると鋭利な物で切られたようにパンツが裂かれていて血が出ていた。
顔を上げると、一匹の狼が目の前にいて右前足には修司の血と思われる赤い液体がついていた。
もう一匹もすぐ横に現れ、修司は追い詰められた。
「クソ・・・もう無理か」
(あの女神にもう一度会って一発やり返すって決めてたのに、これはもう無理かな)
修司はこの状況でこれ以上逃げ切れないと悟り、体から力を抜いた。
そして、狼二匹が修司に襲いかかろうとした時、
修司の後ろから風の刃が2つ飛んできた。
ザシュ!ザシュ!
そして風の刃は狼達に当たり、二匹の命を刈り取った。
「え?」
後ろから突然来た風の刃に目を見開いていたら、声がかけられた。
「あなたはどうしてこんな所にいるのですか?」
修司が振り返るとそこには見たことのない一人の女性がいた。
その女性は白のワンピースの様な服に黒の靴を履いていて、髪はロングのブロンドで顔全体は可愛いより綺麗な言う印象で少し釣り目な顔つきだった。
なにより一番特徴が出ているのは耳が長く先端が長細くなっていることだった。
「・・・エルフ?」
女性の姿を見た修司が抱いたのはそんな印象だった。
「質問に答えていませんが、あなたが異世界からの来訪者だということは分かりました」
「どうして俺が異世界からって」
「あなたは先程、私を見た際エルフ?と疑問を口にしました。この世界である程度の年齢の人ならばエルフの見た目は何かで見聞きしたことがあります。つまり、貴方程の年齢が経っていそうな人がエルフを見て疑問に思うこと自体がなによりの証拠です」
「成程。はい、俺はこのシュートレラに召喚された小田修司と言います。まずは助けてもらってありがとうございました」
修司は痛む足を我慢しながら立ち上がり女性に向かって頭を下げた。
「小田修司さん、頭を上げてください。私はここスイーレンの女神クォーリカルと申します。」
修司が出会った女性は国家スイーレンの女神クォーリカルだった。
修司もまさか自分の目の前の女性が女神だとは思わず、目を見開いた。
だが、その目の中には驚きとは違う感情も見えた。
「女神・・・まさかこの短時間で2人目に出会えるとは思わなかった」
「2人目?・・・失礼ですが小田さん、あなたはどこの誰に召喚されたのですか?」
クォーリカルは修司の言葉に疑問を覚えたのか少し厳しい目で聞いてきた。
修司はクォーリカルの態度が少し変わったことに疑問を覚えつつ答えた。
「ああ・・・確かクージセルの女神・・・セフィゾレスだったかな」
「セフィゾレス・・・そうですか」
修司から女神の名前を聞いたクォーリカルは少し考え事をした後、ある提案をしてきた。
「小田さん、もしよろしければ今後のことも含めお話ししたいこともあります。私についてきてもらえませんか?」
「・・・はい、俺も少し聞きたいことがあります。よろしくお願いします」
「ありがとうございます。それではここではゆっくりお話をすることも出来ませんので場所を変えましょうか」
そう言ったクォーリカルの周りから紫色の光が出始めた。
「テレポート」
クォーリカルが言葉を発した途端、修司の視界が変化した。
国家都市ミジャス 城内 ある部屋
修司が目を開けるとそこは見たことが無い部屋だった。
「突然申し訳ないと思いましたが、私の魔法でここまで移動しました」
「いえ、それは大丈夫ですけどここは?」
「ここはスイーレンで一番の都市ミジャスです。そしてミジャスにあるお城の私の部屋になります」
「ミジャスですか・・・クォーリカル様の部屋ですか?いいんですか異世界の人を入れても」
「ええ、私自らお招きしましたのでお気になさらず。こちらへお掛け下さい」
クォーリカルは話しながら窓際にあるテーブルとイスを手で指した。
修司は移動しながら部屋を少し見回した。
入口の扉から見て、右側にキングサイズのベッド、真正面に今案内されたテーブルとイス、左側には学校の校長が使っていそうな長テーブルとイスがあった。
「小田さん、今あなたのことは私の個人的な理由でお招きしていますので、お茶の1つも出せないことお詫びします」
「いえ、そんな・・・あのままあの森にいればどうなっていたか分かりませんから」
修司は痛む右足を少し見せ、苦笑いをした。
「ああ、そういえば先程のロウウルフと遭遇した際に怪我をしていたのですね。少し失礼しますね」
クォーリカルは修司の横に行くと、右足の傷がある所に右手を突き出すとピンク色の光が出た。
「ヒーリング」
クォーリカルのヒーリングにより修司の右足の傷跡は完全に無くなった。
「こちらもクリーン」
クォーリカルがそのまま続けてクリーンと唱えると修司の服の破けていた箇所も元に戻り、綺麗になっていた。
「あ、ありがとうございます」
「いえ、これくらい問題ありません。
クォーリカルはそのまま机を挟み修司の対面の椅子に座った。
「それでは早速ですが、小田さんも確認したいことがあると思います。お互い知りたいことを聞くということでよろしいですか?」
「はい、よろしくお願いします」
「それでは私からいくつかお聞きしたいことがあります。先程と同じ内容ですが、小田さんはクージセルの女神セフィゾレスに召喚されたということでよろしいですか?」
「はい、その通りです」
「セフィゾレスによって召喚された異世界人はあなた一人ですか?」
「いえ・・・確か俺を含めて16人だったと思います」
「・・・・・・16人ですか」
修司からこの世界に召喚された人数を聞いたクォーリカルは眉を細め、右手を口元に持っていき考える素振りをした。
「・・・クォーリカルさん?」
人数を聞いた後、黙り込み何かを考え始めたクォーリカルを見て修司はどうしたのかと疑問に思った。
名前を呼ばれたクォーリカルは少しきつい目線で修司に話しかけた。
「小田さん、申し訳ないのですが少し気になることがあるので確認したいことは後回しにして頂き、先に小田さん達がこちらに召喚された経緯を話して頂けませんか?」
「はい、それは構いませんが俺も途中でスイーレンに飛ばされたのでそれまでに聞いた内容だけになりますがいいですか?」
「はい、それで構いません。お願いします」
クォーリカルから了承を得た修司はそこからシュートレラに来た経緯を話し始めた。
ここまでお読み下さりありがとうございます。
定期的に掲載出来るように頑張りたいと思います。
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