表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵ピカロ  作者: KAMOME111
1/8

プロローグ  救済主

最近、高校への進学が決まりました。

ずっと生きたかった高校やったからよかったああああああああ!

 熱い…


 一回息をするたびに喉がただれそうだ。喉のどこかが焼けるのが分かる。息をするのがつらい。肺が息をするなと訴えている。


やばい…死ぬ…


 このとき燃え盛る炎の中、青年は生きることをやめようとしていた。こんなつらい中生きても仕方がないと…

 しかし、外から聞こえたこの会話が彼を無理やり生かす気力を与えた。


「ヤベエ…ヤベエって!どうすんだよ!こんなに燃えちまって!」

「知らねえよ!取りあえずずらかるぞ!警察が来る前に!」


 年齢は十代後半だろう。この言葉のみをはいて、彼らはバイクふかして走り去っていった。

 はらわたが煮えくりかえる。青年の中の最も深い部分が暴れ出すのが分かった。その暴れた何かが彼を無理やり生かしている。


何とかして…何とかして復讐してやる…殺してやる…殺す殺す殺す殺すコロス!


 青年の腕はいつしか出口へと勝手に動いていた。足はもう、折れていて、立つことすらかなわない。腕は黒いすすが付いており、木の破片が突き刺さっている。しかし、少年に痛みという感覚は残っていなかった。あるのは怒り、そして…


「おにいぢゃああああああああああああああああああああああん!」


 青年の耳に変わり果てた声が聞こえる。


「柚葉ああああああああああ!」


 青年は叫んだ。喉が焼けただれようとも、声がどれだけかすれようとも、その妹の名を…

 腕が勝手に妹の部屋の方へ動く。青年の心には、怒り以外の感情が生まれようとしていた。その感情は、今まで妹へは向けたことのない感情であった。

 憎かった…ただひたすらに親の愛情を受け続ける妹が…彼女が生まれてから、両親は彼女ばかりをほめたたえた。自分は彼女を上げるための桜だ…

妹はピアノを習った…成功した

妹はバレエをやった…成功した

妹は料理が出来た…両親から頼られる存在となった

妹は妹は妹は…

とめどなく感情があふれた。


 気がつくと、青年はマンションの外で呆然と立っていた。折れた脚は確かに、通常の人間ではありえない方向に向いていたが、痛みという感覚のない青年にはどうでもよかった。ごうごうと燃えるマンションを唯見つめた…向こうからは野次馬の声がガヤガヤと聞こえる。あいにく、自分が立っている場所はマンションの正面だが、野次馬はそこまで近づいてはいないらしく、誰も彼の存在に気付かなかった。赤ちゃんの泣き声、中年のおっさんの悲鳴、、神よ神よと唯祈る声、声にならない声、どうせ助からないのにこの子だけはと喚くマダム…


愚かだ…


 青年は思った。人はこの煩わしさから逃れるべきだと…それてそれを実行できるのは、『死』のみであると…

 青年がふと横を見ると、人気のない路地にたたずむ1人の高校生くらいの野次馬がいた。彼は必死に火事の様子を携帯で撮影している。


~皆さんも火事にはお気をつけて~♯俺んちの近く#火力がすごい!


少年は自分身の回りで起きた映える事象をSNSに投稿する。野次馬を規制する黄色いテープの中に入ったことがばれたくなかったので少年は裏道を通って帰る事にした。この辺に住む一部の学生しか知らない草木でできたトンネルを通っていく道である。しかし、それが間違いだった。


「道をあけてください!」


赤い服の消防官がやってくる。手遅れともしらずに…


「あ~~、こりゃだめだ…」


 消防官は誰にも聞こえないようにつぶやく。このとき彼は、燃え盛るマンションの様子から、生存者が、わずか数名しかいないことを察した。このときにはもう、誰の泣き叫ぶ声も、生きたいと願う声も聞こえなかったからである。

 次の瞬間、消防官は何かを発見した。木片である。とがった先の方には、血がビッチャリと付いており、血痕がぽたぽたとしげみの方まで続いている。

 このとき、消防官は、何とも言えない衝動に駆られた。この血痕の先が知りたくなったのだ。


「まあ、少しくらいなら…」


 消防官は、煩悩を肯定することにした。責務が好奇心に負けた瞬間である。消防官は、しげみの中を進んでいく。


不気味だな…


 この夜道の中、何に出くわしてもいいような暗い道が続く。月が雲に隠れる。しげみの中に街灯があるわけもなく、裏道は暗闇と化す。

 すると、ある一つの地点で、血痕が消えているのが分かった。消え方は自棄に不自然であり、そこだけ、自棄に空間が広がっている。今までは、大人なら、匍匐前進が必要だった道が、そこだけは、しゃがめるくらいのスペースになっていた。そこには一つ、電源が付きっぱなしの携帯が落ちていた。


おい玉田!

明日のさ、持ち物って何?

おい!

既読スルーすんなて!

ふざけてんやったらもういいから!

なあ!

もおええわ!


携帯には、一方的に送られたメッセージのみが残されてあった。


「田中さん、田中さん、すぐにきてください!」


 聞きなれたメガホンから、自分の名前が呼ばれる。


やばい…


 消防士の頭の中に、焦りの文字が浮かぶ。自分がサボっているのがばれたかもしれないのだ。焦りと恐怖が彼の頭の中をいとも簡単に支配する。彼は何も考えず、携帯を手に取り疑問を残しながらしげみを抜けて責務へと向かった。

この作品は、読売テレビさんで放送していた「あなたの番です」に憧れて描いた作品です。

おそらく、だいぶの長編になると思いますので、出来れば最後まで、何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ