7話 ---星砂解説---
最後は雑貨区画だ。
鍋やら民芸品やら、なんでもござれだ。
倒産品処分市か、忘れ物処分市って雰囲気だな。
「聞いてらっしゃい見てらっしゃい、世にも珍しい『星の砂』だよ。」
「ヒロ兄、『ほしのすな』だって。見にいってみよ。」
おっと。ハルが食いついたな。
オチは、大体読めてるが、思ってたのと違うかも知れない。
とりあえず連れてってもらおう。
「ある時、空から星が降ってきて、砕けた結果がこの『星の砂』さ。流星みたいに一瞬の輝きに願いをささげなくても、この砂になら、いつでも、いくらでも願いが捧げられるよ。」
いくつか小瓶が並べられる。
「お兄さん。よく見ていい?」
「よっ!小さな坊ちゃん。よく見てくれ。」
確認を取ってから、ハルと瓶をよく見ると。
「砂一粒一粒が星型してるだろ。この俺様が星が落ちたところから集めてきた代物さ。今なら一瓶、銀貨2枚だよ。」
「ヒロ兄。ほしのつぶがいっぱいだぁ」
うん。まごうことなき『星の砂』(有孔虫の殻)だ。
「ヒロ兄。母上にかってかえろ。ほしのかけら、母上、よろこんでくれるかな?」
ここでハルには種明かししておこう。
「確かにこの辺では見ない珍しい砂だけど、星の欠片じゃないぞ。暖かい海にいっぱい居る小さな生き物の殻で、その海の砂浜の砂は全部これだ。」
「え?そうなの?」
周りに聞こえないように小声で話していたのだが、お兄さんには聞こえたようだ。顔が青い。
とっさに瓶を押し付けてきて、大げさに
「いやぁ、買ってくれるのかい、小さな坊ちゃん。いやぁ、お目が高い。」
と言ってきた。
押し売りは困るんだが、と思っていると、どこからともなく銀貨二枚を取り出し
「毎度!おおきに。」
とその銀貨を自分の革袋に投げ入れた。
[口裏合わせてくれ。お願いだ]と目が訴えかけてくるのを見て、仕方ないなぁと思いつつ大げさに
「わぁ、本当に星の欠片だぁ。母上へのいい土産が出来ましたぁ。」
と、可愛子ぶりっ子ぎみに言っておく。
ハルの「ヒロ兄。キャラが違う」の白い目に耐えてその場を後にする。
仕方ないじゃないか。
あのお兄さんの商売を邪魔するわけにもいかないし、あの場はああ演技するしかなかったんだから。
貰った星砂は、ハルから母上に渡してもらおう。
ハルはちゃんと説明できるかな?




