9話 ---転職兄貴---
「お兄さん。頑張ってる?」
「おっと、せい…」
誰がオットセイですか!
「違った、坊ちゃんいらっしゃい。」
以前会ったアクセサリー売りのお兄さんだ。
とはいえ、この通りは結構有名処が出店している区画なんだが、
「坊ちゃんのアドバイスのおかげでアルケミ工房と縁ができ、こうやって売り子をさせてもらってます。」
なんでも、元締めからの卸以外に、自分で仕入れ先を開拓したら、元締めから追い出されてしまいその代わりにその仕入先に雇ってもらったそうだ。
普段はそのアルケミ工房で事務仕事をしながら、市の日にはこうやって売り子をしているという。
「しかしいい品ぞろえですね。これなんか銀貨1枚じゃ安すぎませんか。」
的屋時代の品ぞろえからすると格段に質は上がってはいるがそれでこの価格は安すぎる。原価割れしていないか?
「ここにあるのは工房のお弟子さんの作品でして、腕試しとして置かさせてもらってるんです。」
口調も『的屋のにーちゃん』から『まじめな売り子兄さん』に変わってる。勉強したんだな。
「ヒロ様、これなんかラーヤ様に似合いそうです。」
「こっちのピンはヨル君に上げたら喜ぶかな? あっ!これなんかスーちゃんに似合いそう」
「私のものよりも御姉様方、私たちのカテ御姉様に買ってあげてはいかかでしょう。」
「「それはいい考えです!」」
お弟子さんの試作でこれならアルケミ工房の親方は相当いい腕の様だ。
イプスがいるので直接頼むことはないが、一度親方にあってみようかな。
「お兄さん。今日はコレとコレ。後こっちのと、コレかな? 御姉様方の手に持ってるのもこっちに持ってきてください。一緒に会計しちゃいましょう。」
「ヒロ様、よろしいのでしょうか。」
「紳士たるもの、令嬢たちのお買い物には気前よく無ければいけません。」
「…坊ちゃん。前はあんなに値切られたのに…」
前の値切り合戦を持ち出さないで下さい。
「品が違います。原価はともかく、これだけの腕前。値切ったら罰が当たります。でいくらになります?」
「銀貨7枚となります。」
「ではこれを。」
「銀貨7枚、丁度いただきました。ありがとうございます。」
「いえ、今日はいい買い物ができました。」
「はい、またのお越しをお待ちしております。」
帰ったら、アルケミ工房の事。なにか知って無いかイプスに聞いてみよう。




