8話 ---五鶏騎士---
「さぁさお立合い!この鶏。うちで育てた特別品種だ。」
いつもの鶏売りの口上だが、そばには雄鶏はいない。
大きな木箱が置いてあるだけだ。
「おいおい、いつもの雄鶏たちはどうしたい?」
「毎回楽しみにしているのによ!」
客たちは騒ぎ出すが、
「しずかに!」
と鶏売りの喝が飛ぶ。
ここから鶏売りの口調が変わる。
「出でよ!騎士たちよ」の掛け声とともに箱から1羽の雄鶏が飛び出て<シュバッ!><シュバッ!><シュバッ!> と鋭く剣武を舞うように羽を振るい
「レッドリッター」の声と共に剣を構えたポーズをとる。
次に箱から飛び出した雄鶏は流れるように舞い
「ブルーリッター」の声と共に扇を構えたポーズをとる。
高く飛び出た雄鶏は羽手裏剣をまき散らし
「グリーンリッター」の声と共に弓をつがえるポーズをとる。
次の雄鶏は箱の上に立ったかと思うと、瞬間移動のごとく場のあちらこちらに移動した後
「パープルリッター」の声と共に居合のポーズをとる。
そして、<バコン!>と箱を壊してもう一羽出てきて
「イエローリッター」の声と共にサイド・チェストポーズをとる。
「5人そろって…『ゴリッター!』」
さすがに鶏売りの口上ではバックに爆炎は上がらないが。
「おい、あれってブローキャス劇場の『ゴリッター』の登場シーンじゃねーか。」
「結構かっこいいなと思ったが、あれを劇場でやってるのか?」
「本物はもっとすげーぜ。」
「そーか、見てみてーな。でもそれをここでやるってのはパクりじゃねーのかよ?」
もっともな意見です。
ブローキャス劇場では月市の日での公演演目を何か月か上演した後、週市の日にシフトして上演している。
『ゴリッター』は戦隊モノを模したものなので間違いな意見ではない。、
「今回はブローキャス劇場にお願いしてこの五羽にここまで教え込むことができました。今回演じさせて頂きましたのは先週まで月市公演の『秘密の騎士ゴリッター』です。今日から月市公演は『二人の乙女戦士』に変わり『ゴリッター』は来週に公演日が変わっております。今回のこの演技に御興味ありましたら、ぜひともブローキャス劇場へ足をお運びください。」
この鶏売り。鶏たちの演技指導をブローキャス劇場にお願いしに来たのだった。
そして劇場の宣伝を対価に演技指導してもらった結果がこれである。
「今回も同様、雄1羽に雌9羽のセットに台車付きで金貨5枚だ。10セットしかないから早い者勝ちだよ。」
と、ここからは元の鶏売りの口調だ。
鶏売りのお兄さんも劇場宣伝用の口調を指導されていたのだった。
「兄ちゃん! 1セットだ。」
「こっちにも、1セットくれ。」
「今回も面白かったよ。」
と、おひねりが飛び交う中、今回も完売御礼となった。




