2話 ---劇場到着---
劇場に着くと、若い騎士がタラップを用意する。
騎士は侍従の役目も兼務しているようだ。
先ず父が降り、義母に手を差し出す。
義母はその手を取り降りる。
僕らには女騎士が手を差し伸べてくれる。(結構美人さんだぞ)
「ルーフィン公爵様、公爵夫人様、ご子息様方。当ブローキャス劇場にようこそいらしてくださいました。特等席をご用意しておりますのでこちらへどうぞ。」
支配人らしき者が出迎えてくれた。
「うむ。世話になる。」
貴人観覧用の個室に案内された。
それも舞台真ん前の一番いい場所だ。
僕たちには幼児用の高椅子も用意されている。
いつの間にか女騎士は騎士服からワンピースに着替えて、お茶の用意を始めていた。
彼女達は侍女の役目を兼務だ。
男騎士は廊下での警備か?
ドレスコードもそうだが、観劇の際のマナー・タブー、というものがあり、その中に『大人数で押しかけるものではない』という物がある。
たいていの貴族は、護衛兼使用人を、観劇人数と同数連れて行くのが暗黙の了解というものらしい。
「フィロルウェインの見せてくれた『侍従の鏡』だが、ほかの劇場は全く関心も示さなかった。私は面白いと思ったのだがな。只この劇場のオーナーの一人、ブローディアだけが前向きに考えてくれたのだ。」
この世界の『劇』というものがオペラのような『歌劇』を指すものならば、あのような演目は『邪道』と取られても仕方のないものであろう。
部屋にあったあの舞台は、大まかに解体し父に全て渡してある。
どうやらここに運び込まれ、練習用の舞台としていたようだ。
ドコデモドア兄弟に出張要請があり、ここのオーナーには鏡演を一度見てもらったと聞く。
「今日が初公演の日でな、それで招待を受けておったのだ。」
『俺』の世界のコントがどこまで受け入れられるものか反応を見るとしよう。




