1話 ---観劇当日---
今日は、観劇の日だ。
出来れば街中を散策し、現在の文化レベル、経済レベルを確認したいところではあるが……本当に許可してくれるのだろうか?
今回のメンバーは、父と義母、自分とハルだ。
他に御者1名と、護衛として騎士団から4名付く。
2名は女性、1名は若い男だが、一人だけ雰囲気が違う。
白髪でお年を召されているようではあるが、衰えを感じさせぬ風体だ。
「フィロルウェイン、ファルシオン。この者が我がルーフィン騎士団の団長ライヤーンだよ。」
その老騎士を父が紹介してくれた。
「フィロルウェイン様、ファルシオン様。騎士団長を務めさせていただいておりますゴーシュ=ライヤーンと申します。私を含めて騎士団より4名。今回の護衛の任につきます。」
「フィロルウェインです。このたびの護衛、よろしくお願いします。」
「ふぁるしおんです。おねがいします。」
「「「「ハハッ!かしこまりました。」」」」
騎士制服というものがあるのだが、今回はお忍び護衛ということで平服に近いデザインとなっている。
一応、所属を示すバッジはつけているが、近づかないと判別つかないサイズだ。
僕らの衣装も豪奢に着飾ったものではなく、いつもの衣装よりかなり、控えめにしてある。
これは観劇の際のドレスコードだそうだ。
馬車のほかに4頭、馬が用意されている。
護衛騎士はそれぞれ馬に乗り馬車と並走のようだ。
乗り込む馬車には小窓はあるのだが、カーテンがかけてあり外の様子が覗けそうもない。
実際、カーテンは意外と薄絹ではあったがすりガラス越しで外を見るようなものだ。
街中観察はあきらめて、ハルと『あっち向いてホイ』をしながら、劇場到着までの時間を過ごしたのであった。




