7話 ---魔法実演---
ラーヤが入れてくれた果実水で一息つく。
そこでふと、疑問に思った事を聞いてみた。
「ラーヤ。他人の髪の色の事を問うことはタブーと聞いているけど、どういった理由か知ってる?」
(『貴族礼儀手引書』の『タブー、禁止事項』のページに載っていた)
髪の色のバリエーションを見ると『髪の色が魔力属性』ではないかと推論できる。
が、そうなると僕は白髪のはずなんだが、僕は黒髪だ。
「『髪の色が魔力属性』という考えが当たり前だったころ、一人の白金髪の少年が『光属性、光属性』とバカにされていたそうです。」
どれだけ昔から『光』が蔑まれていたのやら。
「実際には洗礼時『火と水の二属性』ということが解りましたが、同時に当時の王のご子息であったということも解り、大変混乱したそうです。」
『白』=『光』と決めつけられて秘密裡に里子に出されたか?
「その後の研究で『髪の色が魔力属性の影響は受けるが絶対ではない』ということが解り、その少年が成長し即位すると『髪の色を問うてはならない』というお触れを出したのが始まり。と聞いております。」
よっぽどバカにされた事を根に持っていたのか。
「となると僕がみんなの属性を聞くのは失礼にあたるのかな?」
みんなの顔も見て言う。
「いえ、私共専属は、ヒロ様に何ができ、何ができないのかを知ってもらう必要があります。私どもの属性をお聞きいただけるでしょうか?」
願ってもない事です。
「みんなの属性を教えてほしい。出来れば魔法も見せてくれると助かる。」
眼を魔力感知モードに切り替える。どうも僕の『眼』は、魔力も『光』として認識しているようだ。
「私の属性は『水』です。魔法はそうですね。」
ラーヤは手に持ったコップに魔力を注ぐ。
『ミテル』
魔法名をつぶやくと一瞬で部屋中に魔力が広がり再度コップに収束。
コップ内には三分の一ほど水がたまる。
教書にない魔法名なので中級かな?
「時と場合によって作れる水の量はかわります。」
うん、解ったコレ。創術じゃなくて操術だ。
空気中の水分子に魔力を作用させて誘因(転送といったほうがいいか?)し、集めた結果だ。
「次ベティ。お願いします。」
「あた、私の属性は『雷』です。魔法はまともには使えません。相手をしびれさせるくらいです。」
打ち解けてくるとたまに地が出てくるようだ。なついてくれて何よりです。(ベ「犬じゃない!!!」)
赤毛で紫のメッシュが入っていたが、おしゃれじゃなくて地だったのね。
「ちょとイリスにしてみてください。出力落として」
(「えーーーー」イリス静かに)
「では失礼して。…ハイ」
ベティはイリスの手にタッチすると
「ギャーーーー!」
イリス。ご苦労様です。
後でプリンを進呈しましょう。
「自分もビリっと来るんであまり使いたくはないんですが、昔は追手から逃げる最終手段として使ってました。」
うんうん、バイオレンスな日々だったんだね。
やはり操術だ。電子を作るというより魔力で静電気を手に集めてるイメージが近い。
「ドコデ、モドア」
彼らの髪は青みがかった緑だ。
「「私どもは『風』です。ちょっと失礼して」」
二人はデ麦粉の上に両手をかざし「………『フールド』」
おおっ!螺旋○! デ麦粉を風の玉で封じ込めた
「「昔はよく、こうやってジャグリングして遊んだもんです。」」
風の玉4つで、二人お手玉。見事です。
「だがそれだと、失敗したとき大変だな。」
「「それです。どちらかが失敗して白くなるかの勝負ですよ。」」
「なにげに、息もセリフもぴったりじゃないか。」
「「そんなことないですよ」」
「ほら、また被った。」
「「えっ?」」
僕が指摘するまで、驚異のシンクロ率に気が付いていなかったらしい。
一瞬気が緩むと<ポンッ>と玉がはじけ二人とも粉まみれに…
「………『ドラマル』」
二人の頭上を旋風が駆け抜けたかと思ったら、粉を全て巻き込み床上に着地した。
二人とも、粉まみれにならなくってよかったね。
「今のはガーリィですか?」
緑髪だけに風属性か。
「はい、ヒロ様。私の使える魔法は二つだけです。」
彼女はフィンガースナップと同時に『チャッカ』と唱える。
彼女は2属性持ちだ。
親指の先に『炎』が見える。
魔力を『燃やしてる』というよりも『熱』に変換してるというのが正しいか。
赤色光は気体がプラズマ化した結果か?
「今のは、教書には載っていませんでしたが、どうやって覚えたのです?」
「生前の母がやっているのを見て。」
「見よう見まねですか。すごいですね。」
フィンガースナップはかっこいいな。ハルが食いつくぞ。
「アリスとイリスはどうなのです?」
二人とも金髪だから『土』かな?
「ヒロ様。私は『土』ですが、妹は水です。『ツブト』が使えるのですがここでは…」
「解りました。アリスは散歩の際、同行して実演してもらいましょう。イリス。」
「はいヒロ、様。『テッカ』」
ラーヤの時より小さく魔力が広がり、収束。その結果…
「『テッカ』!『テッカ』!『テッカ』!」一滴も出なかった。
当たり前だ。
さっきラーヤの『ミテル』で空気中の水蒸気。根こそぎ奪われたから。
「もういいですよ。イリスにはまたの機会にお願いします。」
「いつもならできるのにぃ………」
初級に限って言えば、魔力はモノに働きかける(物理的な)『力』だ。
後、熱エネルギーに変換できることが解った。
「イリス。さっきの『ビリッ』。痛かったでしょう。大丈夫ですか?」
「いえ、そんな。わたくしの様な見習いにその様な気遣いなど…」
「お詫びにプリンを進呈しようと思ったのですが…」
「プリンは欲しいです。」
素直でよろしい。




