5話 ---侍従兄弟---
やったよドコデ。専属だよ。
落ち着けモドア。まだ内定状態だ。しかし私たちは運がいい。同じ屋敷で働けて、同じ主の専属になれるのだから。
そうだね。
で、今日、何食べた?
ナンノコトデショウ
とぼけるな。なにかいいものを食べたことはわかっている。お前が感じたことは薄々私にも感じられるのだ。
クワシイコトハ、フィロルウェインサマニオキキクダサイ
うーん守秘義務か。そーなるとよっぽどのことなんだろうな。
大丈夫、明日には食べれるよ。
本当か? 先に食べたお前が恨めしいが、明日を期待して残りのお勤めを果たすとしよう。
「モドア。この父上宛ての書類を執事長に。内容は専属の申請書です。後、面会予約を。おいしいデザートができたので一服しませんか と伝えてください。」
「フィロルウェイン様。私はドコデリットです。」
「あっゴメ…と」
フィロルウェイン様は、私たちを各個人として見てくれる主らしさがある。
このようなお方に従事できるのは誠に幸運だ。
でもなんでその主に頭のぞきこまれにゃならんのか?
その上女の子に櫛をいれてもらうなど、恥ずかしいったらありゃしない。
と、その結果がこれか。
いつもは、モドアの顔をみて違和感があったのだが、今はしっくりくる。
そうか、鏡で見た自分の顔だ。
フィロルウェイン様はこのことを解ってらっしゃったんだろうか?
しかし、頭をのぞき込まれたことは謎である。
おや、執事長より連絡ですか。面会予約が通ったようです。
「ドコデ。氷室からデザートの箱1箱持ってきてください。」
お持ちするとフィロルウェイン様は1カップ、箱から取り出しバーバラーヤ様にあずけられ、箱を再び閉じられました。
御頭首執務室へフィロルウェイン様をエスコートしようとすると、
「執務室へはモドアに付き添いをお願いします。ドコデは少しの間休憩していてください。ラーヤ。後をお願いします。」
「「「かしこまりました。ヒロ様」」」
出鼻をくじかれたうえ、とんでもない事態に陥っている。
「ドコデ。こちらに座って休んでいて下さい。私がお茶を入れましょう。」
バーバラーヤ様は我らの大先生であり憧れなのだ。
そんな御方にお茶を給仕してもらうなど、落ち着かん。
少しも休憩にならんぞ。
<ぷるん>
ん?なんだ?
「ヒロ様が、弟だけ味わっては不公平だろうと、取り分けておいたものです。食べてみて何か意見があれば、遠慮なく言ってほしい。との事です。」
なんという心遣い。そうなのだ。ヒロ様はこういう御方なのだ。
そんな御方のご意向を無視することは、私には出来ない。
では、ヒロ様に感謝をしつつ一口。
「うっ、うまい!」
気持ちが切り替わると心に余裕が出てきた。
バーバラーヤ様の給仕が心地いいと感じる事が出来たのだ。
[そうか。ヒロ様はこのように給仕を受けられていたのか。]
大変勉強になった。
今は外務が基本だが、給仕の仕事もあるのだ。
この域を目指して精進せねば。
そうだ、モドアが戻ったら自慢してやろう。
「休憩のお茶は、バーバラーヤ様に給仕してもらいましたが。なにか?」
モドアの悔しがる顔が目に浮かぶ。




