1話 ---異母弟起---
「あにうえ。ころたびはおまねきいららきありがてうごさいます。」
今日は、兄上が絵本を読んでくれる日だ。
ちゃんと母上に言われたように言えたかな?
母上は兄上の事だと、機嫌が悪くなるのはなんでだろう?
貴族は舐められてはいけないそうだ。
兄上はファルを舐めてくるのだろうか?
ファルの顔を舐める兄上なんて、気持ち悪いぞ。
「ようこそ、ファルシオン。よく来てくれたね。」
兄上はこころよく出迎えてくれた。
舐めてこなかった。
兄上は変わった名前で呼ばせ、使用人を名前で呼んでいる。
理由を聞いたら、訳の分からない事を言い始めた。理解できない。
「それにお互いにだけ通じる名前なんて『かっこいい』じゃないか」
うん。解った。『かっこいい』のだ。
『せんぞく』持てたら『かっこいい』できる?
『せんぞく』ほしいよ~。(『せんぞく』ってなんだろう?)
もてなかったら、あばれるぞ。
「絵本が読めるようになるまで、文字を教えてあげよう。読めるようになったら父上にお願いしに行こう。一緒にお願いしてあげるから」
絵本が読めたら、『せんぞく』が持てるらしい。
字は兄上がおしえてくれる?
父上に兄上からもお願いしてくれる?
解った。
今は我慢する。
「そうだ、僕らも二人の時はお互い愛称で呼ぼう。兄弟二人の秘密なんて『かっこいい』だろ。」
兄上が秘密の名前を提案してきた。
やったー『かっこいい』できる
兄上は、ファルに、『ハル』と名前を付けてくれた。
兄上を『ヒロ兄』と呼ぶように言ってきた。
「ハル。自分の事を言うとき『ファル』ではなく『僕』というと『かっこよく』見えるぞ。」
ファル、『かっこよく』したい。
「ファ、ぼく、かっこよくひたい」
ちょっとまちがえた。
ヒロ兄は、すごい。
『かっこいい』事を、何でも教えてくれる。




