2話 ---父子交渉---
「よろしい、この5名の専属を許可する。また、見習い1名をバーバラーヤ預かりとする。」
「父上。ありがとうございます。」
父の執務室である。
「で?おいしいデザートがあるということだが?」
父も甘い物には目がないのか?
「はい、ここに。モドア。」
控えていたモドアがワゴンからプリンを出してテーブルへ。
[プルン]といい揺れ具合
「こちらが、僕が作らせた『プリン』というデザートです。」
…
「なんと形容していいものか。その揺れ具合はまるでオッパ…失敬。茶色い雪を被った山というところか。どれどれ、味は。」
…
…
父、絶句。
「これも『宝玉』の影響か?」
「そのようですね」
あいまいに答えておく。
「デザートというが果物は使ってないのだな。」
厨房からの情報か?材料はばれているっぽい。
「はい。ですが作り方は今は、ヒ・ミ・ツ ということで。」
「親子で、ヒ・ミ・ツ はないであろう。ますます、アルフィーニに似おってからに。『今は』か。含みのある言い方。何を企んでおるんだ?」
「企むなんてとんでもない。僕はただ、アマリアーヌ義母上と仲良くするきっかけになればと思っているだけですよ。」
「それと、どう『プリン』が関係するんじゃ?」
「明日、ファルシオンが僕の部屋に遊びに来た帰りに、これを義母上に渡すよう託けます。これに興味を示せば、僕に接触する機会が増えるはずです。会話する機会も増えるはずです。」
仲良くするにはまず言葉による対話です。(中には肉体言語を使われる方もいますが)
「対話を望む、か。ではその後に作り方を公開する、と?」
「ええ。義母上に」
「えっ?!」
なぜそこで父が驚く?
「わ、私には?」
そんなにプリンが美味しかったのかな?
「心配せずとも、父上には僕が作って差し上げますよ。」
「いや…そうではなくてだな…このレシピ。貴族間の取引に使えると思ったのだ。」
やはりか。
こういったものは価値があるのだな。
とはいえこれは、先ずは義母上との関係改善に役立ってもらおう。
「そうするのなら、先ずは義母上の伝手で喧伝してもらうことが先決でしょう。味が判ったうえで交渉した方が価値が上がります。」
あのオバちゃ…もとい貴婦人たちのお茶会で広めてもらえば価値は上がるはず。
「その後の事は、義母上と相談してください。」
「あ~っ、そうだ~。もう一つ父上にお願いがあったんだ~。」
なんと棒読みなセリフ
父上の怪訝な目が痛い。
「魔法の入門書か手引書があったら読ませてもらいたいのですが。」
「魔法を学ぶのは6歳からだぞ。」
父は渋る、が、
「魔法を使ったり、魔導具触ったりしたら危ないだけで、本を読むこと自体は禁止されていないんでしょ。」
まだ渋い顔
う~ん、もうひと押し。
「本を読んでる最中は、ラーヤ達、暇になるからプリンでも作っといてもらおうと思ったんだけどなぁ~。そしたら父上におすそ分けする回数、増えると思うんだけどなぁ~」
ひじょ~うにわざとらしいです。
が、
「本当か?」
「本当に。」
父が堕ちた。
近日中に、本を見繕ってくれるとの事で、今日のミッション終了。
ランプが消され床に入る。
周りが静かになってから、日課の光塊操作だ。
日に日に扱う量が増えている。と同時に「いじいじ」する感覚がなくなっている。
これが魔力とすると、いや、色が違ったがラーヤの光と同様に感じたからおそらく魔力なのだろう。
知らず知らずのうちに魔力増強と、魔力操作を行っていた事になる。
早く魔法本が読みたいな。そしたらもう少しはっきりするだろう。
明日は弟がやってくる。何の本読んであげようか。
…
おやすみなさい。




