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1話 ---交通事故---
信号が変わり、俺は横断歩道を歩いている。
ふと横を見ると…
あれ? あの車。速度落とさずに突っ込んでくるぞ。
次の瞬間、周りの音が掻き消え、すべての動作がゆっくりになる。
交通事故に会うたび、俺は、このスローモーションの世界を体験してきている。
生命の危機に、脳がフル回転している結果であろう。
幸いなことに今まで、死ぬような事にはならなかったが。
生命の危機だというのにここには、死の恐怖を感じず、冷静に状況を観察する自分がいる。
運転手、あっ居眠りしている。
後2m。このままじゃはねられるな。
1m。ぶつかる!..
0.5m。解っていても体は動かない。
0m。接触。衝撃。目の前が白く覆われる。
俺は宙を舞う。フっ飛ばされた。と思ったら光る球の中にいた。
眼下には倒れた俺の姿。
…
えっ?
幽体離脱?
これって、死の直前の脳内情報混乱による幻視体験と考えていた。
よもや自分か体験することになろうとは…
光る球の中、『私は命を2つ持って来た』超兄貴が現れるでもなく、俺の意識はそこで途絶えた。