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第一章 終 余生は終わらない

 

「つーわけっすよー…たまりませんわー…」

「なんとまあ、そりゃ皮肉だねえ…」


 穀倉地帯のほど近く。粗末な小屋から釣り糸を垂らす二人のハゲがいた。


 駿馬達が陸鮫の屋敷から自宅に帰ってから、ベラに異変が起こった。

 なんと、身体中の獣毛が抜け落ち、普通の人間の娘に戻ってしまったのだ。

 だが嗅覚の強さは残り、筋力が少し上がっていたので、あの儀式はまるっきり無意味ではなく、ひょっとしたら《ヒトという獣》のアスラ人になったのかもしれない。ということになった。

 駿馬はトラ子ちゃんと小太郎に散々なじられた。そら見ろ!ハゲが写ったじゃないかハゲハゲ!となじられた。

 ハゲてない!駿馬はまだハゲていないんだ…!


 というわけでハゲ仲間である、《畑中一郎》さんの別荘にお邪魔している駿馬だった。


「このあいだの可愛い子ちゃんが来ると思ったのに、またなんで連日アンタがくるのかねえ」

「あ、そういうこと言う?せっかく今度海釣りに連れてったげようと思ってたのに…」

「…マグロかい?」

「マグロなんか初心者が釣れるかい!サバのちっさいのとか、アジとか、ハゼとかの五目釣りだよ!サビキから始めろっつーの!」


 二人は、釣り友だった。


「ま、ともかく。ガトちゃんの問題は、そっちで頼んますよ?」

「うむうむ。そのへんは上手くやっとくよ。今も刈り入れの手が足りなくてね。人はいくらいてもいい」


 もう何年も前から、陸鮫のガトーは畑中さんに奴隷を卸していたそうだ。

 畑中さんは全てを受け入れ、立派な農民として育てている。

 過剰に供給された人員を使い、畑中さんはさらに開墾して土地を増やし、今尚領地を拡大している。

 次の聖別候補と言われるのは、なるほど陸鮫の手柄が確かにあるようだ。


 金色の稲田。刈り入れの農民達。笠懸にされる稲。

 まさに日本の原風景と言える。

 だが。


「全く。青い目の日本人がどこにいるってんだか…」

「ああ、私もガトーくんも、白人系だからね」

「…ま、最近は帰化した外人さんもいるから、ないこともないか?」


 畑中さんは、金髪碧眼だ。先日まで駿馬はスーさんと呼んでいた。ステファンと名乗っていたからだ。

 稲作で一級国民に成り上がったので、《畑中》に改名したのだと教えたら、駿馬に「…いや、米作りなら、田中でしょ?稲田とか…畑は野菜だよ?」と教えられ、けっこうな勢いで落ち込んだインチキ日本人だ。

 農民たちにもモンゴロイドはいない。


「全くもう…はなっから日本人(ジャパニーズ)だと言っといてくれりゃ、色んな根回ししないで済んだのにさ。マクラーレン会頭に日本人紹介してって頼んだら、スーさんなんだもん…俺はハマちゃんか!って本気でツッコんだよ」

「誰だい、その人は…」

「釣りの好きなグータラ社員さ」

「ピッタリじゃないか」


 畑中さんは藁を使った様々な雑貨を扱った商店の経営もしていて、そこに駿馬は獣脂と獣革、そして食肉などの食品を卸していたのだが、まさかその食肉は全て自家消費しているとは思わなかった。


 いいもん食ってるじゃん、奴隷達。

 米も食わせてもらってるみたいだし。


 下手な三級国民より待遇が良い。これだから他人の商売にケチをつけてはならないのだ。

 まあ、今更後の祭りではあるが。


「エドちゃんにも迷惑かけたみたいだねえ」

「駄目よ?日本刀(あんなもん)若いのにあげちゃ」

「いつも貧民の世話をしてる、偉いコだと思ったんだよ…」

「あれだ。スーさんは人が良いから。詐欺に合うタイプだ…」

「面目無い…」


 駿馬はこのお人好しが好きだった。


「なんか、詫びをしないとねえ」

「新米、期待してるよ?」

「いやぁ、それだけってわけにはいかないさ。なんか、欲しい物とかないかい?」

「そうねぇ…なら…」

「うんうん」

「…大きなイチモツを下さい」

「それは無理だねえ…」


 立派なこしらえの脇差しを貰った。

 多分あの妙な神力を持っているのだろう。

 ベラにでもあげようと駿馬は思った。

 もう何日かすれば、新米が屋敷に届くだろう。

 まずは何をおかずに食べようか。

 駿馬はとても楽しみだった。



 《岩鳥の巣亭》に、駿馬は来店した。大分薄暗くなってきてのことだ。

 今日は《ドーリーズ》の新商品をチェックするのだ。

 一言で言うなら、牛塩味のほうとう、というべきものが出来上がっていた。

 決して悪くない。全然悪くない。

 味噌味の方が、らしいとは思うのだが。牛らしさを出すなら塩味の方が良い。

 ここは日本ではなく、ほうとうを食べ慣れた人はいない。先入観無しなら、この地の人が考えたものの方が当たるだろう。


 試食をしていたら、仕事終わりのラシャが帰ってきた。最高の生地を使った青と金の装いに、赤髪とスライム風の根付が光る。

 ちなみに、もう一個のスライムはノワール氏の孫娘にあげたのだ。流石に駿馬がつけるのは憚られる。思えばベラにあげても良かったかもしれないが、まあまた買いに行けばいい。

 屋敷に報告に行ったのに、そちらに駿馬がいなかったので、注文伝票は置いてきたとのこと。

 悪いことをしたかもしれない。


 罪滅ぼしに、牛塩味ほうとうを分けてあげる。

 鉄鍋はなかなか冷めない。


「おいっしぃー…」

 冷えた身体に温かい汁物が染みるのだろう。

「おじさんのお鍋は優しい味。これは、凄く尖った味だね…」

「お、いい舌だな」

「そお?えへへ、大分美食家になってきたのかも」

「何が好きだ?」

「こういう、汁物好きかな。麺が入ってるやつ」

「お、ラーメン好きの才能を見たぞ」

「ラー…メン?」

「知ってるか?」

「…んー。なんか、美味しそうな響き」

「世界一美味い食べ物だ」

「そうなの?」

「で、俺は世界一美味いラーメンを作れる」

「世界一の中の世界一!?」

「うむ。今度作ってやるよ」

「やたっ!約束ね!」

「おう!」


 二人は鍋を空にした。ラシャが器を片付けてくれる。

 戻ってきたラシャが駿馬の隣に座る。


「…ね、おじさん」

「…ん?」


「…部屋、いこうよ」


 ラシャが駿馬の手をとった。

 駿馬は手を引かれるままに、三階の元自室へと連れ込まれてしまった。


 ははぁん…と思ったね。

 これが年貢の納め時、ってやつかと。

 なにしろこの女ときたら、こっちに抵抗する気も起こさせない。

 全財産寄越せと言われたって、俺は喜んでうなづいちまうだろう。月決まりの小遣いでやりくりする方が、俺程度の男には似合ってるってもんだ。


 部屋の真ん中に立ちっぱなしのラシャを、俺は後ろから抱きしめる。

「う、ふぅっ!」

「どした?」

「あ、えと、ちょっと、緊張…」


 どうやら、この巣穴には獲物がいるようだ。


 コートを自分でハンガーにかける。

 ラシャの肩を抱いて、ベッドに腰掛けさせる。

 もう十一月になる。戌の月だったか?

 布団の中は冷たい。暖かくなるまで待ってから服を脱がす。

 口づけだけで、ラシャの身体はポカポカと暖かくなってくる。

 服が床に落ちるのも構わず、俺はラシャを脱がしていった。自分ももう下着一枚だ。


「ふぅっ、ふぅっ!う…ああ…」

(全く、可愛くなっちまったなこいつ…)


 かつての美人局の時とはえらい違いだ。

 なんの作為も感じない。

 表情に媚びが無い。身体の強張りが邪魔臭い。こちらがどう動くかを何も予想していない。ラシャの腕や膝がぶつかって色々と痛い。時折、嫌がっているのではないかと不安になる。

 生娘の反応とはこういうものなのだろう。

 怖いのだろうか。少し、目尻に涙が浮かんでいる。


「…大丈夫か?少し、休もうか?」

「や、やだ!だいじょうぶだから!」

「…そっか」

「ちゃんと、おじさんの奥さんに、なるから!」

「ははは、もう、奥さんだろ。あ、嫁?同じだよな」

「まだだもん…」

「そうなのか?」

「今は、えっと、恋人?…だよね?」

「…そっか」


 そうか。恋人なのか。

 いやはや、何年振りの彼女持ちになるのだろうか。

 十年…もっとか。思えば仕事ばかりの暗い人生だ。尊敬出来る親友の存在がなければ、とっくの昔に首を括って…とっくにこの世界に来ていたのか?

 あれ、親友、俺の邪魔してた…?

 いやいやいや、タイミングの問題もあろう。単に死んでただけかもしれん。

 …俺がいなくなって、友は悲しんでくれているのだろうか…悪いことをした。次に会った時には、好きなビールで飲み明かさなければならない。土産話はたくさん出来た。


 それにしても、生前こんな可愛い恋人はいなかった。こんな年下もいなかった。当たり前だが。

 もう、年齢云々を気にはしていなかった。

 ラシャは立派な大人だ。自分で考え、自分で働き、他者をいたわることまで出来る。

 駿馬などより余程大人だ。

 ここは日本ではない。女性の権利だ子供の権利だなんて法律は無い。そもそも人権が無い。

 強さだけが、法律だ。

 ラシャは強い。いい女だ。

 駿馬は釣り合うように頑張らなくてはいけない。


「恋人だったら、おじさんはないだろ?」

「あ!…そうだよね。じゃ、エ、エドガー?」

「もう二級だから、確か名字使ってもいいんだっけか。駿馬(しゅんめ)でもいいぞ」

「シュンメ?」

「江戸川駿馬」

「エドガー・シュンメ」

「お前は、江戸川・ラシャ」

「え!エドガーって名字だったの!?」

「発音も実はちょっと違う、くくく。小太郎に付けられたアダ名だよ。本名は中々名乗りにくくてな」

「ほへぇ…」


「じゃあ、さ。早くあたしを、エドガー・ラシャにして…シュンメ…」

「ああ。でも、もうお前もエドガーだろ」

「え、違うよ」

「え?」

「え?」


 え?


「…頭の悪いおじさんですまない。ちょっと状況を整理させてくれ」

「う、うん…」

「結婚の定義。というか、条件についてだ」

「はい」

「三級国民…今は二級だが。三級国民同士、あるいは女性が四級の場合、お互いの同意があって、肉体関係が有り、男性が伴侶の納めるべき税金を納めることによって成立する。で、いいんだよな?」

「う…多分、そんな感じ」

「…もう、ラシャの人頭税を納めたから、三級国民になっている。どうだ?」

「お世話になってます」

「いいんだ。で、どこか成立してないところはあるか?お互いの同意なら、同意なら…同意、してるんだよね?」

「は、はい…あたしは、もちろん」

「う、うん…俺も、まあ、その…」


 ちょっと照れくさい。


「でも、まだ肉体関係がこれから…なんか、肉体関係って言葉イヤ…」

「ん。他の言葉は無いのかって感じだな」


 うんうん、とうなづき合う二人。


「………これから?」

「うん。これから。だから、早く…」


「…お嬢さん、生娘ではござんせんよね?」

「…いえ、まごうことなき生娘ですが」


 ………

 ………………

 ………………………


「あっしゃ、お嬢さんを手篭めにしやした」

「してないよ?」

「………?」

「あれ?なんで?」

「え、なにが?」


 疑問符飛び交うベッドの中。

 駿馬の頭の悪さはここにきて最大値を記録した。


「…妊娠しなければ、ノーカン?」

「え、いやいや、そもそも」

「…酔った上なら、情状酌量の余地有り?」

「…分かってなかったの、シュンメ…?」


 ラシャは身体を手で隠しながら、自分の鞄を開け、布の包みを持ってきた。

 中にはヨウシュヤマゴボウもどきが入っていた。


「これ、覚えてる?」

「うむ。酒と共にいただいた」

「これね、乾燥させると、血糊の粉になるの」

「ガトーのとこで使ったやつか」

「そうそう」

「あまり美味いもんじゃなかったな」

「食べたの!?」

「…酒に合う…おつまみ、じゃなくて?」

「食べ物じゃないよ!?お腹、こわさなかった!?」

「…下痢したな、そういえば…」

「…ええー…馬鹿なの…?」

「…それは事実だが」


 まだ駿馬は分からない。

 ラシャはなにを言っているのだろう。


「うう…戦ってる時はスゴい格好良かったのに、普段はなんでこうなの…?」

「昼行灯っていうんだぞ?夜しか役に立たないんだ」

「自分で言うしぃ…」


 うーん、うーん、と悩んだラシャは、その末に何かを実演するようだ。

 ぷるんぷるんと揺れる小ぶりの胸が最高にそそる。


 鞄から細めの縄を取り出して、自分の手首に巻きつけ、縛った。

「…上手いもんだな…」

 そして、ヨウシュヤマゴボウもどきの実を一粒持つと、仰向けになって脚を開いた。

「む…大胆だな。決して嫌いじゃないぞ」

 そして、実を潰すと、指から血のような液体が滴り落ちた。


 フラッシュバック!!!!


 駿馬が価値の簒奪者(レトリバー)のリハビリとして普段から無駄使いしている能力の、代表的なものが視力の強化だ。

 そして時にその精度を上げることがある。

 老いて腐った脳に無理矢理大切な情報をすりこむためだ。

 その名も《ワンダフルエンジェルアイ》。

 ネーミングはともかく、重宝している能力だ。

 その能力で駿馬の脳に刷り込まれた映像は、決して消えることがない。

 物理的な衝撃をすら伴って、駿馬は鮮明な記憶を呼び起こすに至ったのだ。


「うあ…あ…ああああああ!これは…うっ!頭が!」

「…えーと。もういいよね」


 大胆ポーズを終了するラシャ。ごそごそと器用に縄を解く。

 かつてと違い、物凄く恥ずかしいのだろう。顔が真っ赤になっている。


「…つ、つまり…俺、何もしてないの?」

「…ここに着いたら、すぐ寝ちゃったよ?」

「な、何故、こんな真似を…」

「初めてを捧げたら、守ってくれるかなって。だから、ほら、銭湯でも…」

「あったな!そんなことも!」

「…でも、全然手を出してくれないから…モーリーさんに、相談したの。嘘をついてるんだって」

「そ、それで?」

「そんなことしなくても、守ってくれますよ。…って。だから、あの夜、全部告白したつもりだったんだけど…」

「あ、あの酒とヤマゴボウは、そういうことかああああああああ!!」

「…あたしの勘違いだったんだね…でも、あの時からね。おじさんが…シュンメが、凄く格好よく見えちゃって…」

「………」

「もう、あたし、本気だから」

「………」

「絶対はなさないよ。あたしの獲物だから」

「………」

「…食べちゃうよ」


 俺は、枕に顔面を埋めて絶叫した。


「もがもが!むぎごがんがーーーー!!(お前は、ふじこちゃんか)」

「え、もぐもぐ麦ごはん?」

「言ってねえ!」


 恐ろしい…なんと恐ろしいのだろう。ガトーの気持ちがよくわかる。

 半年前、春の雨に晒されたあの敗戦の時ですら、ここまでの彼我の戦力差を感じたりはしなかった。

 勝てぬ。待つ運命は即ち死。もしくはお尻に敷かれてぺったんこの座布団ライフ。

 俺には、まだやらねばならないことがあったりなかったり…!!友よ!すまんが俺はまだ帰れぬ!土産話はまた来世!


「でもほら、初物食べると寿命伸びるっていうよね。この際二回分寿命たっぷり伸ばしてもらって、その分二人の時間も伸びてお得っ!ていうか…」

「ラシャ…俺は、気付いたことがあるんだ」

 すっくと立ち上がり、テキパキと服を身につける。

「あれ、何してるの?」

「オトコの嗜みってやつだな」

「そういうもの?」

「俺はな…今日まで、この半年、とても良い余生を過ごしてきた。とても、自由だった。そのことに、気付いたんだ」

「う、うん。そうなんだ…」

「それでな。もう一つ、気付いたことがある」

「な、なに?」

「それはな、明日からもしばらくは、まだまだ自由の身だってことだ!」

 パカンっと扉のかんぬきを蹴り上げる!

 俺は扉の外へと躍り出た。


 ラシャは呆気に取られて、駿馬の逃走を見送ってしまった。

 ややあって。

「あああああーーーっ!!逃げたーーーっ!?」


 シーツを引っ掴んで身体に巻き、ラシャも廊下に走り出る。

「ちょ、待って!待ってよぉ!なんで逃げるのー!?ねえシュンメーーー!!」

『おじさんとお呼びっ!!』

 既に階下まで駿馬は駆け降りていた。声が遠い。


『あれ、兄貴?呑みに来てたのかい?』

『なんてナイスタイミング!ハイヨー、シールバー!』

『おわっ!勝手に乗るなって!なんだよ、急ぐのかい!?』

化け物(ふじこちゃん)から逃げる!頼む!』

『え、誰って!?』


 パッカパッカと軽快に走り出す小太郎。馬の脚には誰も追いつけない。

 《岩鳥の巣亭》の玄関から、逃げる駿馬にラシャが叫ぶ。


「おじさんの、馬鹿ーーーーーーーー!!!!」


『それは事実だ!!』



「ううう…もう…なんでよぉ…いい雰囲気だったのにぃ…」

「ラシャ…なんでもいいけど、ケツ隠しなさいよ」

「え…リノ姐さん?え、ケツ?うひっ!?」

 巻いたシーツがすっかり解けて、後ろ半身丸出しのラシャだった。



 ラシャは元駿馬の部屋に戻ってきた。

 リノと一緒にだ。

 何を隠そう、この宿のお抱え娼婦のリノは、レニの姉だったりする。

 ラシャの知り合いの娼婦で、よく化粧をしてやったりもしていたし、服も貸した。

 エドガーの情報を流したのもリノであり、亭主や他の関係者への情報操作を行ったのもリノだ。

 エドガーは本当は、『ラシャを嫁にする』なんて一言も言ってはいない。

 更には血糊の使い方を教えたのもリノであり、大まかなプランを考えたのもリノ。宿の女将を唆して、ラシャを宿に招きいれたのも、全て黒幕はリノなのだ。

 エドガーにとっての、全ての元凶と言える。


「ううー…こんなのってないよ…せっかくもうちょっとだったのに…」

「馬鹿正直に全部話すからだよ」

「だって…もう嘘の付き合いはヤなんだもん…」

「やっぱアンタは悪いことにゃ向かないね…」

「うう…明日からきっと、《おケツ丸出し美人秘書》とか呼ばれちゃうんだ…」

「ま、楽しそうで何よりだよ」

「楽しくないよぉ…」

 ぶちぶち言っているラシャをみて、リノは提案する。

「もう、他の男に乗り換えたらどうだい?他にも金持ってそうなの、いるよ?」

「ヤダ!シュンメがいい!」

「はあ、そうかい…」

 嘆息するリノ。


 蓼食う虫も好き好きとは言うが、リノには全く理解が出来なかった。


「あんなおじさんのナニがいいんだか…」



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

まずは一区切りでございます。

乱暴な始め方をいたしました。この話は前段階がございますが、あまり女っ気のある話ではなく、つまらなかったらいけないと思い、あえて半端なところから始めさせていただきました。

過去編という形でお目にかけたく思います。

お付き合い頂ければ幸いです。

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