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なろう小説を読む女子高生の独り言

作者: 夏海蜜柑

 

 ベットサイドのライトの明かりだけが薄ぼんやりとオレンジ色に部屋を照らしている。しんと静まった部屋に窓に雨が打ち付けられる音だけが響く。


「あーあ…これは姉妹か…」


 思わず私はそう呟いてスマートフォンを持った手を布団の上にボスンと投げ出した。

 スマートフォンの画面には先程まで読んでいたなろう小説が中途半端なところで止まっている。


「なんでどれもこれもハーレムとか女の子が出てくるんだよー…」


 私のその問いに答える声はない。


 私が最初になろう小説を読み始めた時、私が読んでいた小説の多くで魅力的な女の子達に囲まれた主人公が描かれていた。

 初めは別になんとも気にならなかった。ただ、ランキングにある小説の多くがハーレムの要素を含んでいて、それらを沢山読むうちに徐々にそういった小説が読めなくなっていった。

 私はスマートフォンの画面に『ハーレム』という言葉が出るだけで何故かスマートフォンをぶん投げたくなる衝動に駆られるようになってしまった。


「ハーレム気持ち悪い」と言いながら当時中学生だった私は、『ハーレム』を避けながら穏やかななろう生活を送っていた。



 けれどある日事件は起きた。


 その日私はいつものように『ハーレムがないなろう小説』を読んでいた。

 その小説は本当に面白くて、私は毎晩夜更かしをしながらもその小説を読み進めていた。


 主人公の周りに出てきたヒロインは2人。女の子らしく可愛い女の子と、強くてかっこいい女の子。

 私もその2人が好きだったし、その小説もすごく好きだった。


 その小説は私がなろうで初めて読んだ三角関係の話で、途中までは普通に読めていた。


 …そう、途中まで。


 突然、私はハーレムに似た拒否感に襲われた。


 私の中で突然濁流のように溢れたその拒否感と、この小説を読みたいという2つの感情が、私の中でぐるぐると回り続けた。


 私はなんとか気力でその最後の小説を読みきった。


 こう書いてしまうと私がその小説を楽しめていないようにも見えるけれど、そんなことは無い。本当に面白かった。それはもう私の中で今現在まで『好きななろう小説』第一位に君臨し続けるくらいには。



 しかし私はその反動で、恋愛モノが読めなくなってしまった。


 幼馴染との恋も、聖女様との恋も、王女様と恋も…

 なんならダンジョンマスターに転生する物語で、召喚した人型魔物が女の子なだけで無理なんだ!!

 それらしい色恋の気配を少しでも感じただけで、どんなに面白い小説もよめなくなってしまうんだ!!


 ふざけんな!!



 けれど怒りの矛先をどこに向けたらいいかわからない。


 女の子達は悪くない。

 そりゃそうだ。


 主人公も悪くない。

 ハーレムを甘く受け入れるような主人公は色々無理だけど。


 作者も悪くない。

 うん。現実では可愛い女の子達がおじさんに群がるなんてありえないもんね。夢見たいよね。

 しかもそれ以外の部分ではめちゃくちゃ面白い話を書いてくれるんだ。むしろ感謝すべき。



 というわけで私はどこにこの怒りの矛先を向ければいいのかが分からない。

 毎日ランキングを見る度に、ほどんどの作品で可愛い女の子が出てきたり、タグに『ハーレム』とついていたり。それを見た時の絶望感は凄まじい。



「ハーレムもなければ幼女とか女の子と旅する物語じゃないなろう小説…」


 なくはない。ただ、もう私が見つかるそういった小説は読み尽くしてしまった。


「色恋が一切出てこない話、ないよね…」


 再び私は検索の画面を開く。


 その呟きは溜息と共に、暗い部屋に消えていった。

イケおじ万歳。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とっても同感です。 「ハーレムモノ」に対する拒否感から「恋愛モノ」も読めなくなったところまで、まるっきり同じで、思わず笑っちゃいました。 その点、BL、いいですよね〜。年齢OKなら、お…
[気になる点] >「色恋が一切出てこない話、ないよね…」 これはむずかしいですね。男と女が登場しているのに色恋がまったく無い、というのもそれはそれで不自然な気がしますし……登場人物が男or女だけの作品…
[良い点] 簡潔にまとまっている。主張が分かりやすい。 [一言] 分かるわ~分かるわ~ もはや、子持ちでおばさんの部類にはいる私ですら、ハーレム要素にゾワッとすることありますもん。 ご都合妄想パラダイ…
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