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第二話 友人たちとのまだ日常

『おかけになった電話は、現在電波の届かないところか、電源を―――』

 「くっそぅ。まだ繋がらねぇか」


 場所は変わって通っている高校の昼休みの屋上。

 朝の一件の出来事を問いただそうと、休み時間のたびにLINEや電話を掛けているが、元から電源をオフにしているようで、一向に繋がる気配がない。


「どうすりゃいいかねぇ・・・・・・」


 ため息ひとつついて俺は通話をオフにする。

 こうなってしまってはたぶん連絡は帰るまでつきそうもないだろうと思い、さらにため息をついてしまう。


「あっはっは。まぁ、真澄さんらしいっちゃらしいよな」

『(゜-゜)(。_。)(゜-゜)(。_。)うんうん』

「他人事だと思ってお前らは」


 げんなりしている俺を尻目にけらけらと笑いながら購買で買ってきたパンを頬張っている金髪でチャラそうな男の会田京平(あいだきょうへい)

 そして、携帯栄養食をもそもそと食べている、線が細く小学生と見間違える女の子でこちらも友人である獅子神透(ししがみとおる)がLINEで絵文字を送ってきた。

 二人ともこの高校に入ってからできた友達だ。

 取り合わせ的にまったく気が合いそうにならない面子ではあるはずだが、妙に馬が合ったのか今こうして飯を一緒に食べる仲である。

 ちなみに、なぜ透が肉声でなくLINE経由での会話なのかというと、本人曰く「口下手で」とのこと。


「でもさぁ、さすがに今回はダメだろ? いきなり他人を家に住まわせるって」

「そうかぁ? 俺さまだったらめっちゃ楽しみになるね。透もそう思うだろ?」

『!!(゜ロ゜ノ)ノ ブン(; ̄ω ̄= ̄ω ̄;)ブン』

「マジかぁ。でも向こうから来るって言ってんなら亜人種ってことだろ? かわいい子が来たら俺さまに是非紹介してくれよな♪」

「だが断る。京平にその手の情報を与えるとろくな事にならないからな」

「んだよ冷てぇなぁ。俺ら友達っしょ?」

「あのなぁ。一週間前に亜人種の子にちょっかいかけて危うく半殺しにされかけたのもう忘れたのか」

『((((;゜Д゜)))』


 あの時を思い出したのか、透が顔を青ざめさせ、ガタガタ震えながら携帯をタップする。

 俺自身もあまり思い出したくはない。

 しつこく京平にナンパされてキレた亜人種の女の子が、京平をアスファルトに叩きつけ、馬乗りになってただひたすらに殴っていた。

 辺り一面血の海で、時おり痙攣を起こしていたりしていたのが本気で怖かった。

 今こうしてピンピンしているのが嘘のようだ。

 ちなみに、先程から俺たちが言っている亜人種とは、通行門(ゲート)から来た人たちの総称だ。

 見た目は俺たち人間と変わらないが、彼ら、彼女らには尻尾や角、羽、肌の色など、細かい違いがあったりする。


「そう言えばさ、亜人種で思い出したけど、うちの学校に亜人種の子たちが何人か転校してくるんだってよ」


 微妙に薄ら寒い空気の中、被害のあった当の本人は気にしてない風に、あぁと思い出したように話題を変えた。


「入学式にならまだしも、新学期入ってから一週間で? また変な時期に来るな」

「急な話だったらしいぜ。まるちゃんから聞いた。いきなりだから手続きとかでヒーヒー言って半泣き状態みたいよ?」


 まるちゃんとは俺たちのクラス担任のことだ。

 本名は丸若聖美(まるわかきよみ)

 愛らしい姿で頑張っている姿が学生たちの間でマスコット的な人気があり、みんなから先生とは呼ばれず、愛称で呼ばれている。

 まるちゃん本人は先生と呼ばれたくて必死だが、その必死さが小動物的な感じなので、先生呼びはしばらくはないだろうな。

 まぁ、今はそれはさておき―――


「まるちゃんから聞いたってことは、うちのクラスに転入ってこと?」

「だろうなぁ。どんな子かは教えてくれなかったけど。もしかしたらお前ん家にホームステイする奴もいるんじゃね?」

「・・・・・・可能性は高いよなぁ」


 急に来る亜人種の転校生って所は共通してるし。

 ただ今は、推測でしかない。

 考え込んでいると、くいくいと袖を誰かが引っ張った。

 引っ張られた方を向くと透が心配そうな顔をして俺を見ながら携帯をタップしており、俺の携帯からラインが届いた音がした。


『(´・ω・`)?』

「大丈夫かって? んー、まぁそりゃいきなりだし、大丈夫かと言われれば大丈夫じゃないけど。でもまぁ、なんとするさ」


 不安そうな顔をする透を安心させるように頭を撫でながら、俺は笑顔を見せる。


「ありがとうな、心配してくれて」

『(*´ω`*)』


 頭を撫でられた透はふにゃっとした顔になり、くすぐったそうに身をよじらせた。

 透だけは俺のことを真剣に心配してくれるので、常識が欠けているやつらばかり相手にしている俺にとってはまさに清涼剤である。


 「これで両方とも天然でやってるってのがまた・・・・・・なんだかねぇ」


 京平がぼそりとそう呟いたが、俺たちに聞こえることはなかった。

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