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episode 7 いざ王都へ!

 剣闘技祭当日を迎えた朝はよく晴れていた。


「よし!

 これでいいわ。

 ミーニャ、行けるわね?」


 着替えも終わり気合いも充分。

 今は自信と確信が心を満たしている。


「は、はい!

 私も準備は終わりました」


「よし、行くわよ!!」


 ミーニャを従え屋敷を出ると、グランフォートが馬車を準備し待っていてくれた。


「良い表情ですね。

 早速ロジエへ向かうと致しましょうか」


「グランフォートも行くの?」


「えぇ、もちろん。

 国を挙げての祭りですので、各領主も開会宣言に出なければなりません。

 それに、アテナを推薦した身分でもありますしね」


「そんなことまでしてくれたの?

 って、何か違うの?」


 誰しも参加でき勝ち進むだけで騎士になれたり女王と婚約出来るのに、何か良いことでもあるのだろうか。


「特には無いですが、紹介される時に目立つことは間違いないですよ」


「中々良いじゃない。

 婚約者がいるんじゃこっちだって目立たなきゃ注目されないわ」


「その通りだと思いますよ。

 さぁ、乗って下さい。

 そろそろ行きましょう」


 ミーニャから順に乗り込むと、馬車は首都ロジエにゆっくりと動きだした。


「ちなみにさ、婚約者ってどんなヤツか知ってる?」


「えぇ、会ってきましたよ。

 貴女達より僅かに年上に感じましたが、しっかりしている印象を受けましたね。

 そうそう、婚約者の方も参加しますし、彼が騎士叙勲対象者に選ばれなければ婚約破棄になるそうです。

 もしかしたら対戦することになるかも知れませんね」


「ホント!?

 そうなれば願ったり叶ったりじゃない!」


「彼は城に滞在しているとのことで、紋章の入った服を着ていますよ。

 会ったら挨拶でもしてみたらいかがですか?」


「挨拶するわよ。

 宣戦布告のね」

 

「お嬢様、そこはしっかりと挨拶なさっておくべきかと」


「婚約者だから?

 あたしだって王になるかもなのよ。

 立場は一緒じゃない。

 それにお祭りだって言っても未来が決まるかも知れない闘いなの。

 生半可ではやれないわ」


 確かに女王の見定めた人物であるが故、敬意を払うべきなのかも知れない。

 しかし、それはこの国に住む者と一介の旅人では立場が違うのではとも思っている。


「アテナの言っていることもあながち間違いとは言えませんね。

 婚約者という肩書きだけで、今日でそれも無くなる可能性を否定できませんし。

 ただし、穏便に済ませて下さいね。

 推薦した私の立場というのもありますから」


「そ、そうね。

 そうだったわね。

 なるべく手は出さないように心がけるわ」


「お嬢様、それだけは絶対に!

 絶対に止めて下さい!」


「分かってるわよ。

 冗談よ、冗談」


 ミーニャは本気で思っていたらしく、冗談だと分かると深い溜め息をこれでもかと吐き出した。

 これにはあたしもグランフォートも大笑いし、心も軽く道中を過ごせた。


「さて、着いたようですね」


 馬車を降りると、そこは城門を越えた中庭だった。


「スゴいわね!

 ミーニャあれ見て」


「花のアーチがこんなにもあるのですね。

 色とりどりの花がこんなにも」


 流石は華の国と言われるだけのことはある。


「さぁ、お二人ともこちらへどうぞ」


 グランフォートの後に続いて城の中を進むと大きな広間へと辿り着いた。

 そこには五十人くらいだろうか、各々の武器を携え張り詰めた空気を醸し出している。


「アテナ、ここが参加者の控え場所になります。

 ミーニャと私は来賓席に行きますので、ここからは一人ですが頑張って下さい」


「お嬢様、くれぐれも気をつけて下さい。

 大怪我だけはなさらないように」


「何言ってんのよ。

 あたしがそんなヘマするとでも思ってるの?

 相手だって失格にはなりたくないだろうけど、まぁ気をつけるわ」


 この祭りの決まりだと多少の傷なら良いが、致命傷に成りうるようなことは失格の対象だと聞いた。

 相手への寸止めや武器を突きつけることで勝ち名乗りが出来る仕組みらしい。


「それじゃ、しっかり見ておいてね。

 あたしの勇姿ってやつを」


 手を振り二人と別れると改めて大広間を見回す。

 話している間にいつの間にか参加者が増えていたらしく、ざっと見ても倍近くに膨れ上がっていた。


「こんなに居るんじゃ誰から話しかければ良いのか分からないわね」


 グランフォートとの稽古でもらったアドバイスの一つ『話すことで外見と違う面を見つけ出す』を実践したかったのだが、これだけの人数となるとどうにも躊躇してしまう。

 だが、そこで目に映ったのはあたしとさほど変わらないくらいの年の子だった。


「ねぇねぇ、君も出るの?

 あたしはアテナ。

 よろしくね」


「え?

 あ、うん。

 僕はスティレットス」


 差し出した手を握りかえす男の子の手は、普通の子供より硬い感じがした。


「まさか僕と同じ子供がいるとは思わなかったよ。

 アテナはどうして参加するの?」


「あたし?

 そりゃあ、女王と婚約して王になるからに決まってるでしょ?

 スティレットスは違うの?

 かなり剣の稽古をしてるみたいだけど」


「僕もそう、そうだよ。

 その為にいっぱい練習してるからね」


「やっぱりそうなんだね。

 何かあたしよりも強そうな感じがするもの。

 もし対戦することになったらお手柔らかに頼むね」


「対戦することはないと思うけどね、アテナの運次第ってとこかな。

 その時は手加減させてもらうよ。

 じゃあね」


 最後の最後に不敵な笑みを浮かべ、スティレットスは立ち去った。

 あんな笑みは大人が何か企んでいる時にしか見たことがない。

 グランフォートの言っていた通り、話しかけて見てよかった。

 ただの予感でしかないがあの子は危ない気がする。


 さて、と周りを見回し次の相手を探すと、目に飛び込んできたのはあたしの会いたい女性にそっくりな後ろ姿だった。


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