第八話 バカじゃねぇし!!
少し前……
清道side
勢いよく風が顔の横を通り抜ける。いいねぇ、いいねぇ、レーサーってのはこんな気持ちいい
ことを仕事にしてんのか。憧れるね。なりたかないが。
「つぅーかさぁ、何で俺が運転してんだ」
「私ペーパードライバーなんですよぉ。あなた免許持ってるんでしょ?」
「持ってるけど…‥年下に運転して貰って恥ずかしくねぇのか」
「日常茶飯事です」
「………」
こりゃダメだ。
その時、プルルルル、と〝五十嵐・天音の携帯端末〟が鳴った。
「はいもしも‥‥」
「ぐおおおらぁ!!変態スリ野郎!!」
こっちもだめだ。
「耳元で怒鳴るんじゃねぇよ。女性としての品位を疑われるぜ」
「るっさいわね、五月蠅いんなら耳元から携帯離せばいいでしょうが」
「それはそれで聞こえねぇよ」
「適度に離しなさいよ」
「そもそも、てめーが小さい声で話しゃいいだけだろーが」
「何であんたの都合で私が声の音量下げなきゃいけないのよ」
「俺のがお前より上だからだ」
「?」
「メールは読んだろ。〝生きたきゃ俺の指示に従え〟それとも死にたいのか」
「何であんたの命令聞かなかったら死ぬのよ」
「お前の脳みそだと死ぬからだ」
「私の事バカだって言いたいの!?」
「プロフィールではそうみたいだな」
携帯端末には、その本人の特徴が事細かに記されている。名前、年齢、性別は勿論のこと、
住所やスリーサイズまで乗せられている。
(盗られることを予想してあるとしか思えねぇな)
その中で〝学歴〟も書かれている。何歳でどこの学校に行き、どの教科で何点取れたか。
「高校二年生時点での点数、国語17点、数学26点、理科31点、しゃか…‥」
「だあああああああああ!!」
「お前何で普通科は入れたの」
「自分でもわかりゃないぃ‥‥」
想像を絶するマヌケだったようだ。
「これで分かっただろ。お前のオツムじゃこのゲームを切り抜けるのは難しい。
俺が多少easygameにしてもな」
「いーじー?」
「英語で簡単なって意味‥‥」
「意味は知ってんのよ。どういうことかって聞いてんのよ」
「へぇ、英語5点だったから知らないものと…‥」
「だああああかあああらあああ!!バラらしてんじゃないわよ!!」
「これ聞いてんの俺とお前だけだぞ」
「‥‥‥一応、うちの相方も聞けるようにスピーカーにしてあんのよ」
「てめぇの頭でそれだけ考えられれば上出来だ。指示難しいっつって思考放棄されないだけな」
「どんだけバカだと思ってんのよ!!」
「ま、オツムはともかくとして、その能力は評価に値する。よろしくだぜ、mypartner」
「勝手にパートナーにすんな」
ちなみに
清道は何人もの携帯端末をスっては能力を確認、スッては確認を繰り返し、
強い能力を探していた。彼の頭ではどんな能力でも、有効活用できるが、
考えるのが面倒という理由で柔と剛を併せ持つ能力者を探していた。
それが、五十嵐天音。その時偶々スるときお尻に触れてしまった。
あながち変態スリ野郎は間違っていない。
清道「誰が好き好んで汚ねぇケツを触るかってんだ」
天音「汚くないもん!」