第七話 奇天烈な四人組
識代side
「すげぇ!」
「わっ!?」
急に左隣から声が上がった。見てみると、年の頃は、ざっと16~17程だろうか。
頭に水色のタコともクラゲともつかない触手のある何かの被り物を被った、
奇妙極まる青年がいた。
「俺、選ばれた‥‥…選ばれたんだ!!」
「選ばれた?」
私は、ついその言葉を声に出して行ってしまった。
「宇宙人だよ!!これはきっと、宇宙人が地球人がどれほどの身体能力、頭脳を持っているかの
能力テストなんだ!!」
‥‥成程、この人が何故ここに来たのか、わかってしまった。電脳オタクの度が過ぎて、
誰にも扱えないから、疎まれていたのだろう。実際、私も付き合えるかどうか分からない。
(いや、友達にはなれないだろうなぁ)
「おい」
「はい?」
私に話しかけてきたのは、先程まで、謎の声と話していたぼさぼさ髪の白衣の人。
「短剣、いや、何か刃物の類を持っていないだろうか」
「短剣、ですか」
そうか、ここには謎の声よろしく、〝人食いの化け物〟が出るんだ。自衛のためにも
武器が必要だ。
「いや、ごめんなさい」
「そうか…‥うーん、刃物があったら自殺しようと思っていたのに」
「貸せるか!!」
自衛じゃなく自殺!?何を考えてるんだ、この人。ここに来たことは‥‥まぁ、かもしれないケド。
自殺するほどの事じゃないだろう。
「ま、自殺ポイントは幾らでもあるか。あの廃墟になってる建物から飛び降りてみるか」
「やめろおおおおおおおお!!」
識代side
「いいですか!?各々勝手な行動をしない様に!!特に幸原さん。勝手に死のうとしない様に」
「はいはい」
ぼさぼさ髪の白衣を着た人は、名を幸原・智弘。職業は犯罪心理学の教授。
てっきりお医者さんかと思ってた。
「‥‥‥ダメ、此処圏外だ」
「当たり前だろ。ここは地下最下層のスクラップ場っつってたろ。何階あるか知らんが、
二階層はあるだろう。それだけではない。人を攫っておいて、誰かに助けを求められるような
所には攫わねぇだろ」
「んぐっ」
髪の毛をピンクに染めている少女は、久米村・円という名前らしい。少し抜けているところが
玉にきず、という奴だ。
「宇宙人さん、宇宙人さん、どうか姿を現したまへ」
「う、宇宙人じゃないんじゃないかな」
「‥‥‥‥無くはない。」
「は?あんたバカじゃないの?」
「馬鹿はお前」
「あぁ!?」
「まぁまぁまぁ」
幸原さんと円ちゃんはすぐ喧嘩を始めてしまう。特徴的な被り物を被っている明石・心くんは、熱狂的な宇宙人信者。あの人たちの喧嘩なんて、プランクトンの共食いの方が興味をそそる。その程度の関心しかない。
「あの、宇宙人が閉じ込めたのはないことは無いって…‥」
「だって、これだけ広い施設を地下に作るなんてどんだけかかると思ってんだ。宇宙人だって言ってくれたほうが、信憑性が高い」
「でも、流石に宇宙人はないでしょ」
「いるぞ、宇宙人はいる!!」
「宇宙人がいるかどうかは今はどうでもいいんです。兎に角、今は鍵を探すのが先決です」
「鍵よりまずはその出口だろ。いざ脱出というときになって、誰かに奪われたら面倒だ」
「そ、そうですね」
やっぱり頼りになるなぁ。頭脳がいると。しかし、四方八方今にも崩れそうな廃ビルと、
腐敗臭をまき散らす死体ぐらい。門も見えなければ行き止まりも見えない。
私たちのこれからも見えない。
「おい、早くいくぞ」
「あ、はーい」