第三十五話 お互い様
成神side
その部屋は、正方形の部屋で血のように赤いカーペットが敷かれている。このカーペットなら心置きなく耳からの血をたれ流せるってわけだ。下を向いてみてみても分かりやしない。
先ほどまでの扉はしまっちまって何処にあるのかわかりゃしねえ。椅子が二つとテーブルが一つ。
カーペットがなけりゃ殺風景と罵りたくなる。
男は、俺の耳を見るといきなり押さえつける。
「……聞こえるか?」
「……!」
その手を俺が振り払う前に男はすぐさま退け、近くの椅子にドカッと腰かけた。
「ただのデモンストレーションのつもりだったのに。いきなり耳から血が流れだすんだから驚いたよ」
「ルールヲ説明シマス」
「ここは、外と違い、能力が使える」
「オ互イニコメカミニ銃ヲ当テ引金ヲ引キ、」
「面白い能力イカサマバトルを繰り広げろということなんだろうが、俺はそんなことはしない」
「両者何方カノ頭ガ撃チ抜カレバ……」
「一斉にしゃべるな!」
こいつの力の強さはさておき、最もあの爆音から近いお前がなぜ一切被害を被っていない?
それは体を強化する能力のせいだとして、どうやって俺の耳を治した?
そんなこと些細なこととでも言いたげに拳銃を躊躇という言葉をゴミ箱にでも投げ捨ててこめかみに押し当て、引き金を引いた。
「……おいおいおいおい、少しは俺に心の整理をする時間をくれよ!」
「そんな事を言っていると機を逃すぞ。幸運の髪は前髪しかないんだからな。ほら」
そう言って拳銃を投げてよこす。さっき躊躇という言葉をゴミ箱に捨てたと言ったが撤回しよう。
こいつは辞書ごとゴミ箱にぶち込んでやがる。
「オーケー、いいよいいよやってやりますともよ。前髪を引っこ抜いてやればいいんだろ、
あんたが取れねえようによ」
同じようにトリガーを絞った。
(ジ・エラー)
龍side
カチッ、カチッ、カチッ
彼が何度も引き金を引いても、間抜けな音が零れ落ちるだけだ。弾丸が発射されない。
「おお?壊れちまったかなぁ。弱ったなぁ」
「……ディーラー、変えろ」
ディーラーが彼から拳銃を受け取ると、そそくさと近くの壁に手を当てる。
壁が左右に開き、出て行ってしまった。
(気づいたのか?俺が弾を次に入れ替えたのを)
あり得ない。ただの人間には見るどころか反応さえできない速度のはずだぞ。仮に見えたとしても何をやっているかわからない。しかも撃つ前にプレッシャーもかけてやった。
そんな状況の中で正確に俺が何をしているか把握した?
(こいつ、肉体強化系の能力か?だとすれば壊れた理由がわからない。
何かしたなら俺が見逃すはずがない)
……中々面白そうな相手じゃないか。




